おこめこんぺ

安楽椅子格闘家

2016/04/03 23:51:23
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 パチュリー・ノーレッジには知識が足りない。

 この一文を、彼女に近しい者は否定し、顔見知りは意外に思い、どこかで聞いた貴方は……もしかすると笑う。
 しかしながらこれは他ならぬパチュリー自身の、魔女としての行動理念であった。
 そうでなければ、吸血鬼の館の地下にて、書物の塔に囲まれ、寝食を忘れて昼夜読書に耽るという度の過ぎた行いなどしない。
 魔女になって以来、小さな砂漠が無限に広がる森を浸食するかのごとく、パチュリーは己の知識の空白をひたすらに埋め続けてきた。
 世界が終わるその瞬間まで、その途方もない鬼ごっこを続けるつもりなのか。
 この挑発的な問いにも、彼女は迷うことなくうなずくだろう。あくまで視線を手元に開いた本に落としたまま。
 
 しかしながら知識の不足――それと持病の喘息を除いては、パチュリーは自己に何一つ不満を抱いていなかった。
 生まれ持った魔力、そして魔法を操るセンス。身長、体型、髪の色、顔立ち、身体能力、知性、性格等々。
 肌の色が吸血鬼の友人より青白いことも。眼鏡無しでは遠くのものが霞んで視えることも。
 廊下を歩くだけで息切れする体力も。必要以上に外と関わらぬインドア嗜好も。

 他者から見れば欠点といえる部分についても、何一つ問題にしていなかったのだ。
 三日前までは。

「さすがに……読書中に肘を脱臼するとは思わなかったわ」

 快晴の空の下、日陰と本を愛する魔女は憮然とした口調で呟いた。
 場所は紅魔館の屋上。時計台のすぐ側にある小さな広場で、普段はここの住人も含めて誰も訪れることのない所だ。
 そこにパチュリーともう一人。

「しょうがないですよ。私は詳しくないですけど、あそこにはすごく重い本もあるって聞いてますし」
「………………」
「治療魔法が効いて何よりです。次からは重い本は慎重に持たないと、ですね」
「脱臼した原因は本じゃないわ。一応、そういうことにしてるけど」
「と言いますと?」
「真犯人は紅茶の入ったティーポット」
「………………」
「……内緒よ」
「はい」

 笑みを引っ込めた紅美鈴は、謹んでうなずいた。

 二人とも、それぞれのいつもの場所で過ごしている時と同じ服装をしている。
 パチュリーの方は三日月の飾りのついた帽子、そして白と紫を基調としたネグリジェを想わせるゆったりとした服。
 薄暗い図書館においては映える見た目なものの、日中のこの場所では、どことなく間の抜けた印象がぬぐえなかった。
 一方の美鈴は、赤いまっすぐの長髪に青の瞳、軽く日に焼けた肌。淡い緑を基調とした、引き締まった二の腕までが見える半袖の華人服。
 吸血鬼の配下とは思えぬほど、昼の世界が似合う外見である。

 中身も含めて対照的な二人がここに一緒にいるのは、特別なトレーニングのためであった。
 己の肉体がかなり脆くなっていることに気づいたパチュリーは、ここらで一旦ポリシーを曲げ、空気のよい場所で適度な運動に励むことを決意したのだ。
 そのパートナーとして選んだのが、健康と拳法の専門家である美鈴だった。

「よろしくお願いしますね。パチュリー様と一緒に過ごす機会って、あまりないですし。私を選んでくれるなんて光栄です」
「Elimination Method」
「い、いれめねいしょん?」
「消去法。単純に、私の身近にこの依頼を引き受けてくれそうな識者が、貴方の他に見つからなかっただけ。最適解だったかどうかは、これから判ることになるわ」
「ええと、咲夜さんでもよかったんじゃ」
「悪くはないけど、他にやることが多いでしょ」
「じゃあ小悪魔ちゃんとか」
「妥当ではあるけど、面白がって妙なトレーニングを考案する危険がある」
「お嬢様は……」
「論外」

 最後は即答だった。
 なんとなく理由を察した美鈴も、そこについては敢えて突っ込まなかった。
 ひとまず気を取り直して、

「じゃあ、今日は立ってできる体操をやってみましょう。もし必要があれば、次は清潔なマットとかも用意しますので」

 美鈴は互いの動きがよく見えるよう、パチュリーの正面に立ち、ポーズを取った。

「それではまず、深呼吸から始めます。背筋を伸ばして力を抜いて~」
「………………」
「腕を軽く左右に広げて、身体の真ん中から膨らむように深く息を吸いこみましょう。すーっ」
「すー……ゲホッ!」

 突如、パチュリーの体がくの字に折れた。

「ゲッホ! エホ! エッホッ!!」
「わわ!? 大丈夫ですかパチュリー様!?」
「ゴホ……問題ないわ」

 水中のゾンビでもなければ問題のある声で呻き、パチュリーは駆け寄ろうとする美鈴を手で制す。

「久々の新鮮なご馳走の山に、気管がびっくりしただけ」
「ゆっくりやりましょう……ゆっくり……」

 それからパチュリーは美鈴の慎重極まりない指導の元、手先を揺らすだけのごく軽い体操を行った。
 あまり見栄えのいい運動とはいえなかったが、今の彼女にはそれくらいが精いっぱいだったのだ。
 無茶をして、咳が原因で肋骨を折りでもしたら、それこそ本末転倒である。
 不機嫌そうな仏頂面で黙々とメニューをこなす魔女を前にしても、美鈴は最後まで笑顔を保っていた。
 だが心の中では、

 ――これ、きっと今日一日で終わっちゃうわね……。

 体操が終わってから、口数少なく去っていくパチュリーの背中を見つめる頃には、その予想は確信になっていた。
 太陽が出ている時間でなくとも、パチュリーがこの屋上に足を運ぶことは滅多になく、美鈴と二人きりとなればほぼ皆無。
 滅多に経験できない貴重な時間だったのに、たった一回で終わってしまうのは残念であった。

 ところが、次の日のお昼休みのこと。

「今日は何をするの?」
「おぉっ!?」

 美鈴は驚きの余り、飛び立つ水鳥のごときポーズをとる。
 約束した時間に屋上で待っていたのは、紫の髪をリボンで一まとめにし、黒のジャージに着替えて待機している魔女だったのだ。

「や、やる気ですね」
「まぁね」
「ジャージ、ですか。てっきりその……体操服とブルマかと……」
「寒そうだったから、断ったわ」
「断った?」
「小悪魔が薦めてきたから」

 というわけで、二人は昨日に引き続き、深呼吸と手首を動かす運動を行った。
 それから体に異常を起こさぬよう、極めてゆっくりとした動きの体操を試みた。
 錆びたからくり人形のようにぎこちなく、時々咳き込むこともあったものの、パチュリーの動きは昨日と比べればいくらかまともに見られるものになっていた。
 というより、

 ――これは何というか……。

 美鈴はパチュリーのついてこられる速度で動きながら、妙な既視感を覚えていた。
 深呼吸を維持し、腕をゆっくりと伸ばしていき、関節その他に負担をかけぬよう、体重をごく静かに移動させていく。
 しばらく体操を続けるうちに、美鈴は自らの既視感の正体に気づいた。
 と同時に、川底の藻のごとき動きを見せていたパチュリーが、無表情のまま呟く。

「そろそろ疲れてきたんだけど……」
「あ、そうですね。今日はこれくらいにしておきましょう」

 一度手を叩いて授業を終え、美鈴は用意していたポットからミネラル入りの麦茶をカップに注ぐ。
 それから、ハンカチを顔に当てている魔女にお茶を差し出しつつ、彼女は思い切って提案してみた。

「あのー、パチュリー様。一つオススメの運動があるんですけど、やってみませんか?」




 その日からちょうど十日後、早朝の紅魔館の屋上にて、濃紺の中華服をまとった一人の少女が屹立していた。
 彼女は手をだらりと下げた気を付けの姿勢から、半歩、ゆっくりと横に足を出し、一本の木から、水中花へと姿を変えた。
 両腕を静かに正面に持ち上げてから、体ごと沈めていく。空間にイメージした球と柔らかく戯れるその様子は、初心者の域ではない。
 外の住人は、彼女がいつも図書館にいるあの魔女だとは思いもしないだろう。お団子状に結った髪の色を除けば、まるで別人だったから。
 やがて彼女は、次々とイメージを昇華し始めた。
 見えぬ馬の髪を撫で、見えぬ琵琶を抱え、見えぬ海中の針を拾い……。
 動きは遅々としていながら、小川の流れのように決して止まることなく、一定の速度を保っている。
 五分ほどしてから、彼女は最後に姿勢を収め、長い吐息をこぼした。

 静かだった屋上に、パチパチパチと音が鳴る。

「パチュリー様……」

 小さく拍手していた美鈴は、涙ぐんでいた。

「私、今まで色んな子に拳法を教えてきましたけど、今日ほど感動したことありません!」
「世辞は無用よ先生」
「いいえ、とんでもない!」

 美鈴師範の涙は、偽りではなかったし、恥ずかしいものでもなかった。
 立ち上がるクララを目にしたハイジが、大粒の涙をこぼしたように、動かない大図書館が太極拳を披露した時、門番長は落涙するのだ。
 短いようで長い道のりだった。何しろ、この試みに着手する前のパチュリーの肉体は、リビングデッドと言っていいほどなまっており、美鈴は彼女に体の基本的な動かし方を教えるだけでも、大変な苦労を要した。
 固まりきった紙粘土を壊さぬよう、こね直すかのごとき難題だっが、それを成し遂げた果てに、ついに命が吹き込まれたのだ。
 決して動かなかった図書館が、動いている。確かに生きた存在であるという説得力に満ちている。
 しかも変わったのは外から見える動きだけではなく、中身もであった。

「体を動かすのって、意外といいものね」

 それはインドア派の魔女にとって、新たな発見だった。
 当初はわざわざ本を読まぬ時間を運動に充てるというのは、止むを得ない損失だとしか捉えていなかった。
 だが近頃は、むしろ運動後に頭が冴え渡り、読書がはかどることに気づいたのだ。
 思えば弾幕ごっこの後にも似たような感覚があったが、あれも同じメカニズムが働いているのかもしれない。
 さらには魔法ではなく、呼吸と運動によって取り入れた気が体を巡るというのも、研究に値する事象だった。
 太極拳というこの運動が、肌に合っていたということもあるのだろう。
 あいつを殺すには刃物はいらない。本を取り上げればいい。そう言われた魔女はすでに過去のもの。
 無休で……無休で……そう、読書以外のことを、無休で毎日やり続け、パチュリーは太極拳の初歩の動きを実践できるレベルにまで至っていた。

「これも一応、武術なのよね」
「え? はい。そうですけど」
「こんな遅い動きで敵を倒せるものなの?」

 と、パチュリーは以前から思っていた疑問を尋ねる。

「速く動けば雑になりがちですし、呼吸も乱れやすくなります。より重要なのは、精確な動きと正しい呼吸、そして気の巡らせ方を身に着けることです。決して意味なく遅く動いてるわけじゃありませんよ」
「つまり、実際に闘う時には速く動くということかしら」
「ところがですね。遅い動きなのに、すさまじい勁を放ってくる達人もいたんですよ。ほんの一握りでしたけど」
「勁?」
「え~とですね」

 美鈴は頑丈な紅魔館の屋上を舞台に、功夫の重要な理念の一つである、勁について説明を始めた。
 そのうち彼女は、様々な武術の套路――すなわち、一連の型をまとめた動作を披露し始めた。
 北派に南派、内家拳も外家拳も問わず、自らの動きを挿絵代わりにし、体得した武術について語っていく。
 大陸の技だけではなく、時にその話は琉球空手やパンクラチオンまで及んだりと。
 黙って聞いていたパチュリーは、一時間ほどしてから、彼女にしては珍しく、表情らしい表情を浮かべていた。
 感心半分、呆れ半分。

「貴方、動く武術の図書館でも目指していたわけ?」
「いやさすがにそこまでは……ちょうど私が外界で過ごしていた時期が、大陸で多くの門派が生まれた頃だったので、あちこち放浪するついでに覚えたんです」

 ハッ、フッと套路の続きを実演しながら、美鈴は呼吸を乱すことなく語る。

「こっちに来てからも、その道の達人の挑戦は度々受けましたからね。共通した動きも多いですし、一度手合わせすれば、大体仕組みと狙いがわかるんですよ」
「いつも思うけど、変わってるわね、貴方」

 そもそも、徒手空拳の技を磨くという思想は、妖怪の中でも少数派のものだ。
 たとえあったとしても、人間のそれとはまた違った方向性のものが多い。足場がなくても成立する武術や、長い爪や鋭い牙が前提の武術まである。
 だが美鈴は長きに渡って、地に足を着けている時間を大事にしてきた妖怪であり、人の武術に対する造詣の深さも並大抵のものではない。
 しかもそれらは直接的な手合わせを通じて得た知識だ。
 書物で得た知識を生かす自分とは、つくづく住む世界が違うと思わざるを得ないパチュリーであった。

「でも、パチュリー様に武の才能が無いとも思えないんですよねぇ」
「それ、本気で言ってるの? 私のあだ名と体の弱さは知ってるでしょう」
「ええもちろんこの数日で誰よりも……い、いえ、悪気はないんです。けど観察眼がとても優れてらっしゃるじゃないですか。太極拳の動きもすぐに覚えちゃったし」

 健康女子妖怪は正面に直り、拳を手で隠して敬意を表してくる。

「だからもしパチュリー様が私くらいの体を持っていれば、武術の達人になっていてもおかしくないんじゃないかと」
「持ってなくてよかったわ。私は滅ぶ瞬間まで本を抱いて生きると誓ったの」
「残念ですねぇ」
「仮にそれを目指すとしても、この世の全ての本を読むよりも遠い道のりでしょうね。太極拳の真似事をするくらいで、私の体は精一杯だから」
「じゃあパチュリー様に合った武術を、新しく創ってみるのはどうですか?」

 美鈴はさらりと大層なアイディアを提案してきた。

「新しい武術を……作る?」

 一蹴することもできたのだが、何か閃きかけたパチュリーは、その意見について少し考えてみた。
 やがてそれは、存外真面目な思索へとつながった。

「面白い意見だわ。敢えて魔の領域とは異なる分野を実践し、体験として取り入れることで、より魔法に対する理解が深まるかもしれない。その力が何に向いていて、何に向いていないのか」

 ぶつぶつと呟きながら、パチュリーは思考を巡らせる。
 武術など、創ったことはもちろん、これまで真面目にやったことすらなかった。
 しかし、オリジナルの魔法や自筆の魔導書なら、世に生み出した経験が何度もある。
 だからこそ、パチュリーは経験として知っている。ただ先人の知識を吸収して実践するだけでは、魔女としてのセンスが鈍ってしまうことを。 
 実は創るという行為そのものが、自らを一つ上の段階へと進ませる道しるべに成り得るということを。
 今回太極拳を通じて、自分は初めて、魔法と文献以外の新しい言語で世界を解釈した。
 ならば新しい武術を創りだしたとき、どのような変化が自分に起こるのだろう。興味深い。

「私という存在に対しても、より理解を深めることにもつながるかもしれない。パチュリー・ノーレッジを体現し、なおかつ次の段階へと導く、この私にふさわしい新たなる拳法……」
「いいですね! 私も協力しますよ! どんな名前のどんな拳法になるか楽しみ!」
「名称はすでに決まってるわ」

 ビシッ、とパチュリーは美鈴に指を突き付け、

「魔女拳よ」
「まじょけん、ですか」
「まぢょけん」
「まぢょけん」
「そう」

 以上が、パチュリー・ノーレッジと紅美鈴が、魔女拳(まぢょけん)の開発に取り組んだ経緯である。


 やがてその形が出来上がり、実践するのにうってつけの相手がやってきたのは、ちょうどひと月後のことだった。




 ◇




 紅魔館で本を借りたい?
 なら任せておけ。あそこを訪れた回数なら、まず私が一番だからな。
 あれだけ目立つ色をしたでかい館だと、上から探せばすぐに見つかるんだが、昼間は湖に霧が立ち込めるせいでちとわかりにくい。
 かといって夜は妖怪の時間だから、昼に比べて安全とはいい難い。特に満月の晩は要注意、だぜ。
 慣れてる私は、今日みたいに夕方を狙う時が多い。
 夜の住人共が今にも目覚めそうなところに飛び込んでいくっていうのは、スリルがあるだろ?
 さて到着だ。
 門番は今日は居眠りの日だったか。まぁ起きてる時の方が珍しいんだがな。
 いやでも一度、寝ているところにこっそりイタズラしてみようかと思ったら返り討ちにあった覚えがあるし、実は狸寝入りかもしれん。
 まぁどっちでもいい。寝ている門番でも起きている門番でも、ネズミを通すのが良い門番だからな。
 勝手に入って大丈夫なのかって? 後で怒られるのはあいつの方で私じゃないぜ。
 さて玄関から入って西の館に伸びた廊下をひたすら進もうか。途中で慌てふためく妖精メイドをからかったりしてな。
 そのうち地下図書館に通じる大きな扉が見えてくる。
 陰気な場所だけど、貴重な魔導書がたくさん眠っていて、しかも借り放題ときている。まさに私のためにあるような施設だな。
 ただそこにたどり着く前に、大抵はここのメイド長に見つかることになる。
 残念ながらこれは避けられないんだぜ。どんなにこっそり入ったつもりでも、必ず見つかっちまう。
 ただ館を汚したり物を壊したりして余計な仕事を増やさなけりゃ、いつも親切にしてくれるけどな。
 ここの主人が寝てる時間には、お茶とお菓子まで出してくれて……。
  
「いらっしゃいませ、ようこそ紅魔館へ」
「あん?」

 普通の魔法使い霧雨魔理沙は、頭の中で退屈しのぎにやっていた紅魔館ガイドを中断した。
 出迎えてくれたのは十六夜咲夜。この館でメイドをしている時は、丁寧な口調で応対してくれることが多い。
 が、今日は何かちょっと引っかかる。
 すでに数え切れぬほど訪れた場所だからこそ、微細な空気の違いにも敏感なのだ。

「パチュリー様がお待ちです。どうぞ、こちらへ」

 魔理沙はますます訝しむ。
 確かに用事があるのは図書館だったのだが、前の本も、前の前の本も、前の前の前の本も……というかほぼ全て返さずに借りっぱなし。
 悪いことだと思ってはいないが、喜ばれているとも思っていない。さすがに自覚はしている。
 特にあの図書館の主だ。すまし顔の奥で腸が煮えくり返っていてもおかしくはない。
 なのに向こうから自分を招くとは。。

 ――何か企んでやがるのか?

 魔理沙はいつでも脱出できるよう心構えだけはしつつ、箒を片手に咲夜の後をついていった。
 地下図書館に通じる大きな扉の前まで来て、案内役が交代となる。

「あ、魔理沙さん。待ってたんですよ」

 と営業スマイルで迎えてくれたのは、黒のベストとロングスカートに身を包んだ、赤い長髪の小悪魔。
 ここの使役主の命令に従って司書をしており、魔理沙ともすでに顔なじみである。

「パチュリーに私が用だって?」
「はい。きっと驚かれると思いますよ」
「私は驚かす方が好みなんだがな」

 と軽口で応じながら、彼女と共に魔理沙は図書館に入った。

 ここを初めて訪れれば、おそらく大抵の者は『驚く』ことだろう。
 タイトルを読み上げるだけでお迎えが来そうな数の本が、巨人が使える高さの書架の群に収められているのだから。
 とはいえすでに何度も来ている魔理沙にしてみれば、書物の城塞もさほど圧倒される光景ではない。

 ただ、前回来たときから少々配置が変わっているのは気になった。
 正面奥にあるはずの、読書机が見当たらない。その代わり、ぽつんと椅子に座った魔女の姿が見える。
 彼女の方に向かって、魔理沙は遠慮なくずかずかとカーペットを進んだ。
 しかしある程度の距離まで近づいて、ふと違和感に気づき、歩幅が小さくなった。

 ――なんだ?
 
 様子が変だ。
 これまでのパチュリーに対する魔理沙のイメージは、病人めいた魔女……といより魔女の格好をした病人。 
 血色が悪く、しばしば咳き込み、動きは緩慢、表情は虚ろ。
 そのうち読書机で点滴を受けているのではないかと思う程不健康っぽい見た目の奴。
 ところが今日は何だか、いつもより生き生きとして見えるような……。

「久しぶりね、魔理沙」

 椅子に腰かけたパチュリーは、うっすらと笑って言う。
 その声はますます魔理沙を驚かせた。いつもならもっと近づかなくては聞こえないくらい小さく、咳を気にするような調子だったのに、今の挨拶は何だかトーンがはっきりしていて、耳を澄まさずとも届くくらいだったから。
 それだけじゃなく、何だか肌つやがいい。猫背ぎみだった体も姿勢がよくなっていて、死んだ魚の目から生きた人間の目になっている。
 つまり、およそ魔理沙の知っているパチュリー・ノーレッジではない。

「なんだなんだ。若返りの魔法でも見つけたのか」
「というより、ちょっとした健康法ね。実は私、少し前から武術を嗜み始めたの」
「ぶじゅつ?」

 魔理沙はゴーレムが水泳を始めたと聞いたような顔つきとなった。
 が、笑うのは我慢する。
 里では魔法使いになるという志を散々バカにされた過去がある魔理沙は、誰かが何かに挑戦することを決して笑いはしない。
 宵闇妖怪が南十字星に向かって旅立とうと、氷の妖精がリーマン予想に挑戦しようと、神社の巫女がお賽銭だけで億万長者を目指そうと応援してやる。
 ただし、向き不向きというのはあるとも思ってはいるが。

「はは~ん読めたぜ。つまりお前は、そのかじった武術とやらの実戦相手に、この私を選んだってことだな?」
「察しが良くて何より。タダで相手しろとは言わないわ。もし貴方が私を打ち負かしたら、これを貸してあげる」

 パチュリーは膝の上に載せていた一冊の本を手に取り、掲げて見せてきた。

「高名な魔法使いが書いた、非常に価値ある魔導書よ」
「ほう」

 確かに、離れていても強い魔力を帯びているのが分かった。さぞかし上等なグリモワールらしい。
 元々、本を狩りに……じゃない借りに来たと言っても、具体的な一冊を目指してわけではなかったし、もらえるものはもらっておきたい。
 周りを見渡してみると、読書机だけではなく、書架もここから遠ざけられているのがわかった。
 闘うスペースをあらかじめ準備していたのだろう。つまり自分は、闘技場に招かれたというわけか。

「面白い。受けて立ってやるぜ」

 魔理沙は箒を床に置き、拳を構えた。
 正式に格闘術の手ほどきを受けた経験はないが、格闘の経験はそこらの十代の少女とは比べ物にならぬほど豊富だ。
 おまけにキノコを利用して使う魔理沙の魔法は、副次的に身体能力を上げる効果がある。
 一方、パチュリーのあだ名は知識が豊富な紫もやし。
 魔法に関しては認めてやらなくもないが、本体そのものは人間より華奢だと知っている。
 格闘だけに頼る魔女など、デコピンだけでも倒せる自信があった。

「……………………」
「……………………」

 二人が無言で対峙してから、およそ三十秒が経った。
 パチュリーは椅子に腰かけ、肘掛けに手を載せたまま、動く様子を見せない。
 拳を構えて待っていた魔理沙は、軽く肩をコケさせ、

「いや、早く立てよ。それともまさか、椅子に座ったまま戦う気か」
「そのまさかよ」
「何っ!?」

 魔理沙は驚愕した。
 椅子に座ったまま闘う拳法? そんなものがあり得るのか。 
 不意に、魔理沙は目の前にいる魔女が、座っているのではなく、構えているのだと気付いた。
 背筋は綺麗に伸びていて、左右に少しも偏っておらず、両手も膝の上に置かれた状態で、極めてリラックスしている。
 しかし無形の構えなどという次元の話ではない。なにしろ座っているのだ。競技者ではなく観客の姿勢だこれは。
 もし彼女が本当にこのまま椅子に座ったまま闘うのだとしても、どんな動きをしてくるか、全く見当がつかなかった。

 得体の知れぬプレッシャーを感じていた魔理沙だったが、ふと思い直す。

 ――いや……そうビビることもないんじゃないか?

 冷静に考えて、座って戦うというのは賢い選択とは思えない。
 どこかで読んだ知識だが、足さばきというのは、格闘技における土台だそうだ。
 手のみを使う拳闘の場合も、下半身が無ければ間合いを調節できず、強いパンチも打てない。
 なのでカポエラのような武術はあっても、その逆にわざわざ両足を拘束しながら戦う武術というのはないのだ。
 そして『座る』という行為は、腰を落ち着けるという、自らの下半身を拘束する行為に等しい。。
 寝技に持ち込むというなら話は別だが、椅子に座った状態ではそれも容易ではなかろう。その場合は、床の方が向いている。
 ヨガの秘伝か何かを学んで腕を伸ばしてくるというなら話は変わってくるが……。

 ――もしくは全部嘘っぱちで、事前に周囲にトラップを仕掛けてやがるとか。考えられなくはないな。

 ちらり、と小悪魔を横目に見る。
 彼女は立会人のつもりなのか、ニコニコと成り行きを見守っている。
 普段と変わらぬ笑顔からは、何を考えているか一切窺い知れなかった。
 魔理沙は視線を戻し、気持ちを落ち着かせる。
 もし本当にパチュリーがこのまま椅子に座って闘おうとしているのであれば……一発小突くだけで片が付くだろう。
 罠があるっていうなら、その前に見破ってやる。体の強さはもちろん、知恵でも魔法でも負けるものか。

 やることを決めた魔理沙は、周囲に気を配りつつ、間合いを詰めていった。
 一歩、また一歩と近付き、拳が届く距離が迫ってくる。
 パチュリーには相変わらず動きなし。表情も微笑のまま。
 ついに椅子の真ん前に到着した魔理沙は、無言で手刀を作って振りかぶり、自信満々の魔女の頭目がけて勢いよく……
 
 パシッ。

「なっ!?」
 
 魔理沙は目を見開いた。
 勢いよく振り下ろしたはずの前腕が、パチュリーが音もなく伸ばした左手にぴたりと収まっていたのだ。
 しかも受け止められたという感触はほとんどなく、掌に吸い込まれたようだった。
 
 止められた腕を引かれ、反射的に魔理沙は、その力に抗おうとする。
 その動きを予想したかのように、完璧なタイミングで、魔女の掌底が魔理沙の鳩尾に入った。

「ぐっ、はぁ!?」

 背中で銅鑼を鳴らされたかのような衝撃と共に魔理沙は後ろに吹っ飛んだ。
 何とか受け身を取り、追撃に備えてすぐ起き上がる。

「ふふふ……」

 パチュリーは掌底をこちらに見せた状態で、いまだ座ったままだった。
 普通なら燃え上がるはずの魔理沙の闘争心が、それを上回る驚きに塗りつぶされる。
 あのパチュリーに、しかも椅子に座った彼女に、体術で吹っ飛ばされるとは。
 今のは魔法ではない。魔力が働いた感じは一切しなかった。
 が、食らった感触だけを思えば、まさしく魔法のように衝撃的な体験だった。

「魔女拳の恐ろしさ、少しは味わってもらえたかしら」
「魔女拳……まじょけん、だと……?」
「まぢょけんよ」
「まぢょけん……」
「そう」

 訂正を終えたパチュリーは、両腕をしなやかに動かし、空間を撫でる。
 陰陽を表わす大局図をなぞるかのように。
  
「私が開発した全く新しい武術。今日は魔女拳七段の私の、安楽椅子格闘家としてのデビュー戦なのよ」

 安楽椅子格闘家。
 口にしただけで立ち眩みを起こしそうな響きだ。真面目に格闘技をやっている連中に謝れと言いたい。
 けれども今の攻防だけで、それが決してお遊びではないことが身に沁みてわかった。

「今の一撃は加減してあげたけど、次は立てないくらいのやつをお見舞いしてあげる」
「くっ……」

 立ち上がる魔理沙のこめかみを、冷たい汗が伝う。
 拳を構え直すものの、近付くのは一旦止め、相手を睨み据えたまま、今の一連の流れを分析する。
 振り下ろした腕を受け止められ、腹を押された。
 よくよく思い出してみれば、それぞれ本を取る動作と本をしまう動作だったような気がする。
 つまり魔女拳のコンセプトは、パチュリーにとっては日常的な動きを応用した武術、ということなのだろうか。
 ただし今の攻撃には、それだけでは説明のつかぬ、何か不思議な力が働いていたような気がしてならない。
 じゃなければあんな威力になるはずがない。

 魔理沙にはそれが一体何なのかまでは分からなかったが、実はそれこそがパチュリーの体得した勁であった。
 勁は気と重なる部分も多いが、そもそもは大陸の武術に伝わる、力の正しい運用法である。
 己の運動量をいかに相手の肉体に的確に伝えられるか。
 この題目について、先人達は四千年をかけて取り組み、それぞれの武術で答えを模索してきたのだ。
 その代表的な一つの解答が、大きな動作を用いず、最小の力で最大の効果を狙うというもの。
 まさしく無駄に動くことが嫌いな日陰の魔女にお似合いの技といえた。

 対する普通の魔法使いの信条といえば……

「……今度は私の技を見せる番だな」

 魔理沙は倒れていた地点から、さらに十歩ほど後ずさった。
 気合とスピード、そしてぶれない気持ちが比類なきパワーを生む。それが霧雨魔理沙の哲学だ。

「行くぜ!」

 身をバネのごとく縮ませ、床を蹴って助走に入る。
 
「人力『ブレイジングスター』!」

 動かぬパチュリー目がけて、小細工無しの一撃を叩き込むべく、魔理沙は突進した。
 椅子に座ったままでは、避けることはできまい。ならこっちは最大最速の威力をぶつけてやる!
 けれども待ち受けるパチュリーは慌てず騒がず、床を軽く蹴り、その身を柔らかくひねる。
 すると、彼女の姿は隠れ、かわりに分厚い壁が出現した。

 ――しまった! 回転椅子だったか!
 
 悔やむ魔理沙の渾身の肘鉄が、背もたれのクッションに吸収される。
 直後、さらに回転する椅子によって、大きく横に弾き飛ばされた。

「くっ……! にゃろう!」

 転がる魔理沙は、すぐに立ち上がり、もう一度パチュリー目がけて突進。
 魔女拳七段は嘲笑うかのように、再び完璧なタイミングで椅子を回し、背もたれで防御を試みる。
 しかし、その動きはすでに見たばかりだ。
 直前でブレーキを踏むことに成功した魔理沙は、背もたれに体当たりするのではなく、組みついた。
 背後を取った形だ。さて、ここからどうするか。
 とりあえず魔理沙は、そのまま床を大急ぎで蹴り、パチュリーごと椅子を回し始めた。

「どうだ! 目を回しやがれ!」
「甘いわね」

 パチュリーは涼しい声で応える。

「私が背後に回られた場合の対策を怠っていたと思うの?」

 魔理沙はその時、背もたれが突然爆発したのだと本気で思った。
 実際は、裏側にいるパチュリーが、椅子越しに勁を放ってきただけだった。
 まさしく、魔女拳版の鉄山靠。
 力が一瞬にして浸透し、しがみついていた魔理沙を吹き飛ばす。

「うわあああ!」

 魔理沙は悲鳴を上げながら、またもや床の上を転がった。
 今度のダメージは大きかった。息が詰まり、手足の感覚が遠ざかる。
 視界がぐるぐると回り、全身を蟻の大群が行進していき、ようやく苦痛は一定のレベルにおさまってくれた。
 とんでもない威力だ。これが、魔女拳の力なのか。
 けれども心はまだ折れていない。
 魔理沙は何とか立ち上がり、フラフラの体のまま、めげずに椅子へと向かう。
 しかし、背もたれにたどりついたところで、息切れしてしまった。
 思ったより体にダメージが来ていたらしい。痛みのせいで、判断力も鈍っている。

「ぜぇ、はぁ……あれ……?」

 また吹っ飛ばされるかと思ったが、何も起こらない。
 というより、椅子が妙に軽い。さっきは指先に触れたはずの服の感触もない。
 不思議に思っていた裏から覗いてみると、座っていたはずの魔女の姿がなかった。
 さらに視線を持ち上げてみると。

「むきゅー……」

 椅子から離れた場所で、パチュリーが大の字になっていた。
 おそらく、回転中に勁を使ったことで普段と違うバランスになり、椅子から飛び出してしまったのだろう。
 しかも、

「私の負けよ、魔理沙」
「はぁ!?」

 突然の白旗宣言に、魔理沙は困惑する。

「えっとですね。パチュリー様の編み出した魔女拳は、椅子に座らないと力が発揮できないんです」
「どんな拳法だよ!」

 魔理沙は思わず八卦掌の構えで、解説する小悪魔にツッコミを入れた。

 実はパチュリーが長年図書館に引きこもる中で、一番弱っていたのが足腰であった。
 元々、魔法の補助が無ければ寝たきりになってもおかしくないほど故に、両足で立って攻撃を受ければ、あっさり膝を屈してしまう。
 魔女拳は……椅子に乗って戦うその武術は、その弱点をカバーしてくれる唯一の拳法だったのだ。

「まったく、とんだ茶番だったぜ。でも一応、勝負は勝負だからな」

 魔理沙は嘆息し、床に落ちた帽子を拾い上げ、頭にかぶる。
 それから、置いていた箒も担ぎ、ついでに報酬の本も手に取って、

「この価値ある魔導書とやらは、いただいていくぜ。私が死んだら返してやる」
 
 そんな決め台詞を残して、むなしく床から手を伸ばす魔女を尻目に、霧雨魔理沙はクールに去った。



 が、大図書館のドアを開くと、そこにはなんと。

「うわ――っ!?」

 魔理沙は叫んで数歩退き、そのまま腰を抜かしかけた。
 ドアを開けたその先に、十六夜咲夜が『座って』いたのだ。
 完全にして瀟洒なメイド長が、椅子に座っている。
 それが意味することはすなわち……

「ま、まさか咲夜……お前も……」
「決して、魔女拳が敗れたわけではございませんわ」
 
 美脚を組み換え、両手でポーズを取りつつ、メイド長は宣言した。

「次は私、魔女拳十七段の十六夜咲夜がお相手します」




 ◇




 紅魔館が誇る完全で瀟洒なメイド長。
 彼女はこの紅い館にて誰よりも爽やかな見た目をしている。
 青と白を組み合わせあエプロン付きのメイド服に、染み一つないホワイトブリム。銀の三つ編みを結ったボブカットに加え、瞳の色も操る武器も銀。
 そして当然というべきか、現在彼女が座っているのも、背もたれだけのシンプルかつ上品な白い椅子だった。
 紅魔館はもとより、外でも座っている方が珍しいメイドなだけに、彼女に椅子から見上げられるという状況はあまりない。
 視線の角度が入れ替わったことを奇妙に思いつつ、魔理沙は咲夜に問う。

「お前も魔女拳を学んでいたのか?」
「ええ。十七段よ」
「どういう基準なんだよ一体……」
「貴方も入門すれば知ることができるけど」
「やらん」

 冗談としか思えない物言いだったが、着席中のメイド長は涼し気な表情を崩さなかった。
 魔理沙の方も決して気を抜かない。
 座っていようと床に寝転んでいようと侮れないのがこのパーフェクトメイドだ。
 回転椅子ではないので、パチュリーの時と同じ防御法は使ってこなさそうではある。
 ただこのメイドのことだから、突進する魔理沙に対して、両脚で容赦なくカウンターを決めてくるかもしれない。それは御免こうむる。
 となると、どうするべきか。最大出力の一撃が使えないのであれば、

 ――連撃!

「おらっ!」

 魔理沙は間合いを詰め、左のジャブを放った。
 その拳は残像を残した咲夜の手により、あっさり弾かれてしまう。
 が、

「まだまだ!」

 ヒュッヒュッヒュッ、と魔理沙は短い呼吸と共に、続けざまに拳を繰り出す。
 対する咲夜も瞬き一つせず、それらをさばいていく。
 パチュリーの方は読みと洞察で対応された感じがあったが、こちらは反射神経と運動神経が売りらしい。
 しかもリーチも長い。懐が深く、相手の体までパンチが届く気がしない。
 さらに、こちらの攻撃を弾かれる度に、相手の側に引き寄せられていくような……。

 まさか、と魔理沙が罠に勘づいた、その瞬間だった。
 突然伸ばした腕を掴まれ、力ずくで引っ張られる。

「うあっ!?」
 
 つま先立ちになった魔理沙は、腕をひねられ、自らの意思ではなく華麗なハーフターンを決める。
 咄嗟に苦痛から逃れるべく、手首をねじって腕を振りほどいたが、その隙を見逃す咲夜ではない。
 気が付けば、魔理沙は背中からメイド長の椅子に着席していた。
 さらに息つく間もなく、腕が首に絡んできた。と同時に両脚で胴をガッチリとロックされる。

「うぐっ……!」

 スリーパーホールド。
 背後から気道、もしくは頸動脈を絞め上げる技で、柔道の世界では裸絞めと言われている。
 そしてこの瞬間、普通の魔法使い霧雨魔理沙は、椅子に座ったメイドに裸絞めを受けた史上初の人類となった。
 
 ――ちっとも嬉しくねぇよ!
 
 魔理沙は自分の首に回った腕を両手でつかみ、何とか解こうと試みる。
 が、極まれば返す手段はないとされる裸締め。
 石鹸の清潔な香りと共に、メイド長の細腕が、ついに魔理沙の頸動脈の辺りに食い込んできた。
 こうなれば意識が落ちるまで十秒とかからない。

「貴方の時間は私のもの。貴方の脳内血圧も私のもの。心地よい眠りにつきなさい」

 咲夜が耳元で甘く囁いてきた。
 魔理沙は眠りたくなる本能的な誘惑に、理性と根性で打ち勝った。
 意識がなくなる前に、自由な両手を背中に回す。
 狙いはメイド長の脇腹だ。
 指が触れた瞬間、思いっきりコチョコチョとくすぐってやる。
 
 噂通り体がチタン製であれば最後だったが、幸いにして感覚神経は普通の人間と同じだったようだ。
 拘束が一瞬緩んだ。

 ――よし! 
 
 魔理沙は体を揺すって、辛くもアイアンメイドの魔手から逃れた。
 だがここで間合いを取れば同じことの繰り返しになりかねない。
 この位置関係はむしろ最大のチャンスだ。
 反転し、驚きに目を瞠るメイド長と向き合った魔理沙は、その体を抱きしめ、
 
「おうらっ!」

 全体重を浴びせかける。
 すると椅子はあっけなく後ろに倒れていき、軽い衝撃と共に完全にひっくり返った。、
 形勢逆転。今度は魔理沙に俄然有利な状況となった。
 マウントポジション、柔道で言えば縦四方固めの体勢に入ったのだ。
 上になった者はどんな攻撃も仕掛けることができるのに対し、下の者は逃れるだけでも一苦労。
 しかもメイド長は倒れた椅子と密着した状態なので、この状況を脱出するのはさらに難しくなる。
 彼女のお腹に馬乗りになった魔理沙は、わざとらしく腕まくりして、

「どうする? 降参するか? それともこのまま上からグーで殴られたいか?」
「降参します」

 咲夜は素直に両の掌を見せる。
 引き際まですっきりしているのが、このメイド長のいいところである。
 魔女拳の使い手から椅子を奪い、しかも相手を自分の椅子にしてしまうという痛快な勝利であった。

「ところで魔理沙……」

 仰向けの咲夜は視線をそらし、無表情のまま、少し頬を染めてぽつりと言う。

「早くどいてくれないと、ちょっと恥ずかしいわ」
「こっちの方が百倍恥ずかしいわバカ野郎!!」

 顔を真っ赤にして魔理沙は起立する。
 夢我夢中の格闘のさなかだったからこそできたものの、素のテンションでやれることではない。
 傍目には椅子に座ったメイドに抱きついて押し倒したようにしか見えなかっただろう。
 火照った体のあちこちを忙しく手で払ってから、魔理沙は箒と本を小脇に抱え、
 
「付き合ってられるか! 私は帰るぞ! じゃあな!」
「またのお越しを……」
「しばらく来ないぜ!」

 箒にまたがり、捨て台詞を残して魔理沙は飛ぶ。
 熱くなった顔は高速飛行中の風で冷ますに限る。
 西舘の廊下を、玄関に向かってまっしぐら。
 その途中で、


「止まりなさいっ!」


 熱した刀剣のごとき一喝が、飛行中の魔理沙を制した。
 箒の速度を落とし、魔理沙は片頬を歪める。

「……そうか。今回の元凶はお前だったか。納得だぜ。パチュリーが自力であんな動きを開発できるわけないからな」

 予想七割、意外三割の姿の妖怪が、廊下を通せん坊していた。
 椅子に座ってこちらを見据え、門番隊長は宣言する。

「パチュリー様と咲夜さんの仇は私、魔女拳百段の紅美鈴がとらせてもらうわ」

 本家を遥かに凌ぐ段位だ。しかし、はったりではないだろう。
 紅魔館において、魔理沙が最も多く戦った相手がこの美鈴であり、その実力はよく知っている。

「どーでもいいが、お前は三脚椅子なんだな……」
「四つ足だと食材になっちゃいますから」

 どこまで本気なのかわからんのが怖い。
 しかし今度の相手は確かに一筋縄ではいかなそうだった。
 この門番、弾幕ごっこなら魔理沙が一枚上手だが、体術が混ざると正直かなり手強い。
 そして体術オンリーとなれば……おそらく歯が立つ人間の方が少ない。
 
 魔理沙は今回もじっくりと相手の動きを見定めることにした。
 対する美鈴の方も適度に脱力した状態で、椅子から動かず。
 先に対戦した二人の時と同じ展開だ。
 こちらが近づくのをじっと待ち、間合いに入った瞬間に攻撃を受け止め、あるいは受け流し、手痛い一撃を加える。
 まるで得物が巣にかかるのを待つ蜘蛛のような……

 ――待てよ? もしかすると。

「はっはっは! そうか! 見破ったぜ、魔女拳の秘密!」

 勝利を確信した魔理沙は、高らかに笑ってみせた。

「魔女拳には受けの技しかない。椅子に座ってじっくり相手を観察し、相手の攻撃に合わせて適切な返し技を選択する拳法だ。だから自分から攻めることはできない。そうだろう?」
 
 思えばパチュリーも咲夜も、魔理沙の攻撃に対して返し技以外使ってこなかった。
 だがそれは裏を返せば、返し技以外使うことができなかったのではないだろうか。
 やはり椅子は椅子。座って落ち着くためのものであり、能動的な拳法の足場には成り得ないのだ。
 わずかに口元を引き締めた美鈴の表情を見る限り、その推察は正しかったようである。

「つまり、すでに目当てのブツを手に入れた私は、わざわざお前と戦う意味もないってことだ。こっちの廊下から帰らせてもらうぜ」

 と魔理沙は踵を返そうとしたが、

「ふっ。甘いわね……」

 美鈴は不敵に笑って言った。

「受けの技は、魔女拳における陰。けれども、創始者の一人である私が操るのは、魔女拳の陽! すなわち積極的な攻め!」

 ギラリと眼が光を放つ。
 直後、びょいーん、と椅子ごとジャンプしながら、美鈴は飛び蹴りを放ってきた。

「うおおおぉぉ怖ぇえええ!?」

 慌てて魔理沙はバックステップ。
 着地した美鈴は、続いて椅子を振りかぶり、こちらに向かって……

「ホアタァ!」
「凶器じゃねーか!?」

 上段から椅子を振り下ろされ、魔理沙は後ろに跳びながらたまらずツッコむ。
 こんなもん頭に食らったら死ぬ。
 美鈴は二、三度と椅子を振り回してから、今度はそれを支えにして蹴りを放ってきた。
 怒涛の攻撃に対し、魔理沙はひたすらに下がって避けることしかできない。
 背後が壁なら、あっという間に勝負がついていただろう。メイド長の空間操作で廊下が長く続いているのが救いだ。

「ホァッ! フォウ! フッ! ハイィ!」
「わっ! とっ! こらっ! 待てっ!」

 遠目に見れば、美鈴の動きは舞いに映ったかもしれないが、近くで接すれば、まさしく生きた竜巻だ。
 いつもの美鈴の拳法に、椅子が一つ混じるだけで、全く動きに予想がつかなくなった。
 時にはそれを足場にし、時にはそれを凶器として用い、得物とブレイクダンスを踊りながら、魔理沙を追い詰めてくる。
 これぞまさしく異種格闘技ならぬ、椅子格闘技の真骨頂。

「くそっ! 付き合いきれるか!」

 魔理沙はスペルカードを取り出した。
 もはや格闘戦にこだわってられる状況ではない。だが逃げるつもりもない。

「魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 色とりどりの星型の弾幕を、広い廊下に散りばめる。
 美鈴は怯むことなく、サーカス顔負けの柔軟性と体捌きでかいくぐり、間合いを詰めてきた。
 だがコンマ数秒、魔理沙の稼ぎたかった時間が手に入った。
 目をつむりたくなる気持ちを抑え、しっかりと相手の連撃を見定める。
 拳法家の美鈴は、とどめの一撃に椅子を選ばぬはず。間違いなく打撃が来るはずだ。

「ホアチャァ!」

 予想通り、美鈴が椅子に片手を置き、魔理沙に向かって槍と化した必殺の脚を伸ばしてくる。
 そのタイミングに合わせて、

「おおお!」

 魔理沙は気合と共に飛び込んだ。
 水平に攻撃する美鈴よりもさらに低く、絨毯に顎がつくほどに。
 スカートから取り出したミニ八卦炉を、前方に向けて構えながら。
 次の瞬間、最大出力には程遠かったものの、ギリギリで魔理沙の放った光線は、目標に命中していた。
 
「椅子がなければ、成り立たないんだったよな?」

 床に寝そべりながら、魔理沙はニヤリと笑う。
 美鈴の三脚椅子は、八卦炉が放った光線によって足を折られ、ただの木製の円盤になっていた。
 そして、支えを失った美鈴は尻餅をつき、魔理沙の肩に利き足を乗せた状態で硬直していた。

「簡素な造りがあだになったな。魔女拳敗れたり、だぜ」
「くっ……! 申し訳ありませんパチュリー様……私の力が及ばぬばかりに……」

 美鈴は無念そうに頭を垂れる。
 それを見届け、魔理沙は立ち上がりながら、ホッと息を吐いた。
 勝った。妙な達成感が身を包んでいた。
 最後は魔法に頼ってしまったが、さして恥じる気持ちもない。
 自分は拳法家ではなく、魔法使いとしてのプライドが守れればそれで十分だ。

「じゃあな。今度は椅子なしで相手してくれ」

 魔理沙は箒にまたがり、悠々と飛行を始めた。
 歴史がとてつもなく浅いとはいえ、一つの流派を打ち破ったことにより、格闘戦に対する自信がついた気がする。
 それだけでも来た甲斐はあったのかもしれない。

「ま、一番の収穫はこの本だけどな」

 魔理沙がそう言って取り出したのは、パチュリーからもらった報酬の魔導書だ。
 この本は魔女拳道場の看板代わりにいただいていくとしよう。

「っ!?」
 
 廊下の終点まで来て、魔理沙は慌てて箒に急制動をかけた。
 正面玄関に誰かがいる。しかし妖精メイドではない。
 あのシルエットは、まさか……。

「ウソだろ……おい……」
「見事な戦いぶりだったな、魔理沙。だがまだ終わっていない」

 そこに、一人の少女が待ち受けていた。
 人間なら十を数えたくらいの見た目。ピンクの上等な生地を用いたレースの衣装を、貴族の令嬢らしく見事に着こなしている。
 だが青みがかった銀髪、整いすぎなほど整った顔立ち、大きな蝙蝠の翼、いずれも人の領域にあらず。
 さらに彼女は、大の男四人がかりでようやく持ち上げられそうな玉座に腰かけていた。
 背景は玄関なのでしまらないが、肘掛けに頬杖をつく姿は、豪奢な飾り付きの椅子に完璧にフィットしている。
 まるで一個の芸術品なのではないかと思うほどだ。
 彼女は片手をこちらに差し伸べ、余裕と威風を兼ね備えた声で、

「最後は打・投・極、全てを兼ね備えた魔女拳五百段の私が相手してやろう」
「………………」 

 レミリア・スカーレットの宣言に、魔理沙は今日一番の戦慄を味わっていた。
 ここの主人はその立場上、椅子に座る機会は多かっただろうし、しかも身体能力は妖怪の中でも指折りの吸血鬼だ。
 したがって、魔女拳を使う上で、これほどの素質を持つ存在は他に考えられな……


「はい。こっち、ご注目~」


 場違いな無邪気な声に、魔理沙の背中が震えた。
 忘れていた。もう一人、レミリアと同等の素質を持つ者が、この館にいることを。
 冷や汗を流しつつ、首をのろのろと動かすと、

「その前に、魔女拳四百九十五段の私が、泥棒さんの相手してあげるわ」

 そこには、レミリアと瓜二つの顔立ちの吸血鬼がいた。
 外見年齢も座高も同じ。違いは服の色と、金髪であるあることと、宝石の成った黒い枝のごとき羽。
 しかし一番の差は、彼女が腰かけているそれだった。
 二メートルはあろうかという眼帯をした三頭身の熊のぬいぐるみの脚の上に、彼女はすっぽりと埋まっていたのだ。
 フランドール・スカーレット。パチュリーにも増して滅多に外を出歩かない紅魔舘最凶の存在。
 まさかこいつも魔女拳を学んでいたとは。
 だが彼女の登場は姉であるレミリアにも予想外だったらしい。
 妹の方に冷ややかな視線を投げかけながら、

「引っ込んでなさいフラン。五歳と五段上の私に優先権があるに決まってるでしょ」
「お姉さまこそ、ずるいわ。普通は低い段の方が先に闘うものよね。っていうか、お姉様が五段上っていうのも全然納得してないんだけど。私の方が魔女拳上手いし」
「聞き捨てならないわね。そもそも、ぬいぐるみを椅子代わりにするなど幼稚極まりない発想だ。あんたは魔女拳の何たるかを理解していない」
「あっそ。でも私の方こそ、そのゴテゴテした玉座のセンスには、ついていけませんわ。謁見の間から自力で引っぺがしてここまで持ってきたんでしょ? バカみたい」
 
 間に挟まれた魔理沙は、なんというか、冷凍サンドイッチの具になった気がした。
 ちなみにこの二人、仲が良くないだけでなく、巻き込まれたくない姉妹喧嘩ランキングでもぶっちぎりのトップとなっている。それも初年度からずっと。

「気が変わったわ。魔理沙は前菜。その後に愚かな妹弟子に稽古をつけてやることにしよう」
「オッケー。じゃあ私も始めはお客様。お姉様はその後に取っておいてあげる」

 四つの赤い眼光が、箒を抱える人間の魔法使いを見据える。
 前門の吸血鬼。後門も吸血鬼。
 魔理沙はニカッと白い歯を見せて笑い、

「悪いが、私はちょっと用事を思い出したぜ」

 直後、自分の体よりも大きな玉座が、唸りを上げて飛んできた。




 ◇




「ぷっはぁああ~」

 と息を吐き、魔理沙は家の玄関のドアを開けるなり、迷わずソファに飛び込んだ。
 床は溜め込んだマジックアイテムで散らかっているが、こういう時のためにソファだけは空にしている。
 もっとも今の疲労度ではガラクタの先客がいようと気にしてなかっただろうが。

「くそっ……たった一日で、一年分疲れた気分だ……」

 紅魔館の椅子地獄から命からがら逃げだし、何とか我が家に生還したものの、すでに疲労困憊である。
 段位数三桁の魔女拳は、想像を遥かに超えた代物だった。何しろ、姉の方は重さ二百キロはありそうな玉座を弾丸サーブで打ちこんできて、妹の方は巨大なクマのぬいぐるみを空気との摩擦で火だるまになりそうな勢いでフルスィングしてくるのだ。
 玄関は当然のごとく壊滅状態。
 先に相手した三名が可愛く見え、まともな弾幕ごっこが恋しくなる闘いであった。

「けど、ブツはちゃんといただいてきたぜ……有名な魔法使いが書いた、価値ある魔導書って言ってたな」

 魔理沙は寝転がりながら、いただいてきた本を取り出し、ようやく笑みを浮かべる。
 魔女拳を制覇することはできなかったが、これはちゃんと持ち出すことができた。
 当初の目的を無事果たせたのだから、誰が何と言おうと、実質的に勝利したのは私だ。
 それにしても、こんなにも苦労して手に入れたこの魔導書とは一体どんなものなのか。

「寝る前にちょっとだけ調べてみるか」

 魔理沙はソファから身を起こし、研究用の机に移動する。
 椅子に座り、ワクワクしつつ、魔導書の表紙をめくってみた。




 『安楽椅子拳法・魔女拳 入門編  パチュリー・ノーレッジ著』




「いるかこんなもおおおおん!!」

 絶叫しながら後ろにひっくり返った魔理沙は、そのまま大の字になって動かなくなった。
 奇しくもそれは、師範代であるパチュリーの敗北時の姿と、一致していたのだった。




 ◇




 結局、紅魔館の魔女拳ブームは季節の移り変わりとともに去ってしまった。
 魔理沙はしばらく椅子過敏症となり、座っているだけの者にも警戒心を抱くようになり、神社の縁側でくつろぐ巫女に変な目で見られた。
 一方、創始者であるパチュリーは、新たな武術を創ったことで、自身の精神に起こる革命的な変化を期待したものの、特筆すべき何かは起きなかった。
 けれども、図書館を出て紅魔舘の外の宴会などに顔を出す機会は、以前よりも少し増えたそうな。

 
 参加者の皆さま、お疲れ様です。
 時間がないので、この辺りで失礼します。(何も書いとらんやんけ)

4/18
 コメ返し完了!
 評価してくださった方々、ありがとうございました!
木葉梟
http://yabu9.blog67.fc2.com/
コメント



0.65簡易評価
2.10名前が無い程度の能力削除
パッチェさんが活動的な話はなんか妙な依存性がある。
にしたってやっぱり拳法と椅子の相性はばっちりじゃないですかー!
3.9namria削除
面白い。小ネタを挟みつつ、安楽椅子拳法の闘い方を上手く書けていると思う。
ただ、魔理沙編からちょっとコッテリし過ぎかな……? その点で、姉妹戦カットはちょうど良かった。
ところで、なんとなく作風に見覚えがあるので、どこかで読んだことがあるかも知れません。と言って外れてたら恥ずかしい。
4.10ぶゃ削除
物語を面白くする要素の一つに「意外性」がある
勿論、意外であれば何でも良いと言う訳では無く、出来の悪い物は「唐突」とか「突飛」とか言われる
しかしハマった場合、意外性のある方がより面白くなる事が多いのも事実
パチュリー!
拳法!
これほどミスマッチな物はギャグの一要素としてちょろっと扱われるのがせいぜいだ
だがこの作品ではガチでやりにきた
まさかのメインネタだ
有り得ない物を組み合わせる為に美鈴を用いて、丁寧な導入を行う事で、違和感を綺麗に取り除いた
しかもただ拳法を極めるのでは無く、周到にもうひとつネタを用意し、さらに面白くなるように仕掛けを打ったのは大した物としか言い様が無い
魔女拳
なんと怪しく得体が知れず強そうな拳法だろうか
どんな拳法が出来上がるのか、もはや読み進める以外の選択肢は残っていなかった
あとは実践あるのみ
つまり、今回のいけにえである魔理沙の登場である
彼女のリアクションは素晴らしい
ポスト出川哲朗として立派にやっていける
扉の向こうにいた咲夜に対してのリアクションだけでパチェは満足したであろう
そして満を辞して拳法の原点が登場
すなわち、美鈴再び
こいつとの対決が最終決戦かと思いきや、事はそう単純では無い
まだあのお方達がいる
死亡遊戯方式だ
そしてここは霊夢と魔理沙に次ぐ芸歴を誇り、意味不明なノリの良さを持ち合わせ、何を誰がやっても不思議では無い勢力、紅魔館なのだ
その実力は、当然の権利のように魔女拳の達人クラスである
阿呆の集団(失礼)としか思えないが、再三言っているように、ここは紅魔館なのだ
主題が紅魔館である面白さを凝縮したような物語であった
後半戦は既に拳法の関係無い領域に突入しており、原型は椅子しか残っていないような状況だが、紅魔館である以上、それは些細な事なのだ
面白く読ませて頂きました
7.7名前が無い程度の能力削除
前半はテンポが良くなかなか好みでした。ただ、惜しいことに後半は間延びしている感じがあると言いますか、いくらか劣る展開になってしまったかな、と。しかも、「魔導書=パチュリー著の魔女拳理論」というオチは容易に読めてしまうので、それがこの後半部分の欠点の印象を強めている気がしました。
9.8名前が無い程度の能力削除
キャスターが備わっていれば勝負はわからなかった
11.8名前が無い程度の能力削除
大変面白かった。発想の飛びっぷりも武術メイキングも、そこに至る必然も、無理が無く美しくて笑えます。
12.9あめの削除
読んでいて純粋に面白いし、大変笑わせていただきました。
また「うまいな」と感心させられる展開や見せ方をされていて、実力を見せつけられたというか何というか。

まず話の引き込み方がうまいんですよね。ものすごくスムーズに話に入っていける。「魔女拳(まぢょけん)」が創られるまでの過程の描き方が丁寧で、流れるように読み進められます。
また、魔女拳(まぢょけん)が創られた後の場面転換のシーンは本当にうまいと思いました。視点移動するかあ、と。しかも私は魔理沙への視点移動は一時的なものかと思ってたのですけど、そのまま話が進んでいったことで驚き、「こういう話の進め方もあるのか!」と目から鱗でした。パチュリー主人公ちゃうんかい! みたいな(笑

魔女拳(まぢょけん)の「椅子を使って闘う」という設定もすごく面白可笑しくて笑えるんですけど、美鈴辺りから椅子が凶器になっていて「もはや『拳』じゃないじゃねーか!」と思わずツッコミを入れたくなるのもずるいですよね。
そして最後に登場するスカーレット姉妹。レミリアは玉座を、フランドールがぬいぐるみを持ってくるわけですが、その絵を頭の中で描くことができるんですよ。キャラの性格をうまく捉え、魔女拳(まぢょけん)の設定に組みこむ能力の高さはさすがです。玉座ぶん投げてきたのはさすがに笑いました。

全体から細かい部分まで、「どう書けば面白くなるか」がしっかりと考えられているお話だと思いました。文句なしに面白かったです。
14.10がま口削除
椅子 戦う 中国 → もしかして? ジャッ○ー・チェン
即座にこんなネタが出る中高生です(哀) しかし面白かった!
まぢょけんは腹筋的にも物理的にも破壊力抜群でした。というか、意外と実用的だし。
しかし、攻撃している姿はちょっと不気味かなー……
最後に気になることがひとつ。まぢょけんの段数と年齢って、もしかしてリンクしていますか?
だとすれば、咲夜さんは高校二年生か……色々捗る!
15.9藤茄子削除
 魔女拳――それは中国拳法と椅子を組み合わせたまったく新しい(ry

 どのキャラも生き生きと動き回っていて楽しかったです。特にパチュリーが可愛い。ちょっといつもよりアクティブで、でもやっぱりいつものパチュリーで。特にポニテパチュリー可愛い。
 後半の、畳みかけるような魔女拳有段者の連戦がいろいろフリーダムで笑いました。
 オチも綺麗。
17.8観音削除
紅魔にはギャグこそふさわしい。
19.8智弘削除
まず、タイトルが素敵。
格闘から一番縁遠いパチュリーを持ってきて、冗談めいた筋道をスマートに立て、結末まで見事に書ききってますね。作者さんのバランス感覚の良さが作品全体をよくまとめています。
魔女拳が幻想郷に広まったら人間椅子の使い手とか出てきそう。
20.8ざるさんのような削除
っていうか、パチュリー結局最弱じゃないですかー!
貧弱パチェもどや顔感満載なパチェ魔女拳も見所ありすぎて困る。
21.9名前が無い程度の能力削除
パチュリーが健康になったようで何よりです
22.無評価木葉梟削除
>2様
 拳法と椅子、書く前は正直どうかなと思ったんですが、意外に相性がよくて驚きでしたw
 アクティブなパッチェさんは読むのも好きなので、どんどん増えろー

>namria様
 予想は当たってましたかね?
 姉妹編カットは予定通りでしたが、書き上がってみるとその前も結構間延びしてる感はありますね。
 その辺りがまだ修行が必要なようです。ただ全般的に楽しんでいただけたようで嬉しいです。

>ぶゃ様
 うおお、何だこのコメントは過去最大級の長さじゃないか! ありがたや!
 個々のキャラクターの行動については、もちろん作者の都合なのは間違いないんですが、それをキャラクターの動機からくるものとして自然に成り立たせたいっていう気持ちがあります。ギャグでもシリアスでも同じですね。
 魔理沙はまさにリアクション芸人にふさわしい働きをしてくれました(笑) 
 ただ紅魔館の包容力というか豊かさは本当にすごいと思います。まだこれからいくらでも新しい物語が創作されていくんじゃないかと思いますね。

>7様
 手厳しいご指摘をありがとうございますorz
 正直なところ仰る通り、後半の戦闘などが中だるみしてる感があるので、これからの課題ですね。
 オチについてももうちょっと工夫ができたんじゃないかと思います。せめて〆切があと数日(ry

>9様
 その発想はなかった……!
 絵的にも面白いし、他のアイディアも含めて続編が書けそうな勢いですw

>11様
 ありがとうございます!
 どうせなら真面目にこの結論に至った方が面白いだろうと思い、そんな冒頭にいたしましたw

>あめの様
 うーん、何度読み返してもうれしいコメントです。
 コメディは割とシリアスよりも完成形のイメージを頭に描きやすいですね、個人的に。魔理沙の視点移動についても特に悩むことなくたどりつけたので、やはり性に合ってるのかもしれませんw
 フランちゃんは電気椅子の案もあったんですけど、さすがに怖すぎだったんで止めました!
 それにしてもこれだけ褒めてほしい部分を褒めてもらえると、書いた甲斐があったというものです。

>がま口様
 カッコいいカンフーアクションは多くありますが、笑いのとれるカンフーといえばやはりジャッ○ーでしょう!
 笑っていただけて嬉しい限りです。
 魔女拳の段位数についてですが、パチュリーの七段に関しては操る属性の数から、他はご指摘の通り年齢(想像込み)からですね。
 咲夜さんは地味に年齢不詳ですがw

>藤茄子様
 ありがとうございます。
 ポニテパチュリーはいいと思うんですよ! 他にもポニテ妹紅とか、ポニテになってもらいたい東方キャラはいっぱいいます!(力説)。
 二次創作はキャラのイメージのギャップをつくと上手くいくことが多い気がするので、今回はパチュリーにアクティブになってもらいましたw
 マイペースなようで何気にノリがいいのも紅魔館の面子のいいところですよね。書いてても楽しかったです。

>観音様
 わかります。
 シリアスで勝負できる組み合わせは他にたくさんありますが、ギャグにおいて紅魔に勝てる勢力は実はないのでは、って。

>智弘様
 ありがとうございます。タイトルは正直迷ったんですよね。今となってはシンプルにこれでよかったんじゃないかと。
 SSに限らず、バランスが一番大事な要素だと思っているので、褒めていただき嬉しいです。
 人間椅子の魔女拳みたいですねぇ。神子様とかが似合いそうなw

>ざるさんのような様
 そのとーり!
 一ヶ月とちょっとで、もやしが大木になるほど拳法は甘くないのです!
 貧弱なのにどんなジャンルでもどや顔してそうなのがパチェの好きなところですねw

>21様
 実はそうなのです!
 このSSはふざけて書いたのではなく、彼女が健康となり、外に出かける姿がもっと見られたらいいという純粋な願いを元に……一割くらいは(おい