第2回おこめこんぺ

首をたずねて三千里

2016/07/17 23:51:12
最終更新
サイズ
27.9KB
ページ数
1
閲覧数
643
評価数
21
POINT
173
Rate
1.80

分類タグ

 場末の旅籠などという商売をしていると、何かと妙な輩に巡り合うものだ。
 ただ、その晩の客の身なりは、一風変わっていた。

『ごめん』

 山間に建つ「すずめや」の玄関口に、久方ぶりに客の声がした。
 行灯に火を入れようとしていた主人は、そそくさと腰を持ち上げ、表に出る。

「いらっしゃ……ぎぇっ!?」

 思わず主人は後ずさりした。
 玄関口に立っていたのはなんと、首なし人間だったのだ。
 いや、どう見ても人間ではないので、首なし幽霊、あるいは首なしの化け物か。 

「ど、どちらさんで」

 泡を食いながらも、主人は何とか問い尋ねる。
 すると首なしは、どこから出してるかわからない声で言った。

『泊めてほしい』

 それは押し殺したような調子だが、声色からすると女のようでもあった。
 見れば、肩の高さも主人のちょうど胸あたりだし、腰つきもはだけた脚も、ほっそりとしていながら丸みを帯びている。
 ただ女の体だったとしても、頭がないのでどうにも不気味な手合いである。
 黒色の襦袢に赤合羽というその組み合わせもまた珍奇であり、妖にして艶というよりも怪にして奇といえた。

 上から下まで眺め終えてから、少し思案した旅籠の主は丁寧に申した。

「お断りいたしやす」

 首なしはこの返答にたじろいだようだった。

『なぜだ。銭は払う』
「結構でございやす」
『相場よりも弾むぞ』
「そう言われましても」
『頼む。麓の宿場にある旅籠を片っ端から訪問して、もう五軒断られてるんだ』
「そんなに!」

 どうしてその風体で探して回ろうとしたのだ、と主は呆れた。
 麓の宿場は、かの奥州道中から分かれた羽州街道のさらに裏街道にあり、この辺りの峠を越えようとする旅人が用いている。
 が、何しろ悪路が続くため、良く言えば静か、悪く言うなら妙に辛気臭いというのが専らの評判だった。
 それはさておき、さして変事もない田舎町、明日の朝は、首のない化け物の噂で持ち切りになっていることだろう。
 ひょっとすると、山狩りの準備を始めているやもしれぬ。

「勘弁してください。他の客が怖がってしまいます」
『この宿に客がいるようにも思えないが』
「へ? わかるんで?」
『見えずとも、感じ取れるのだ。というか、お主一人で切り盛りしているのか。しかもこんな山間の宿で。物騒な』

 首なしの言う通りであった。
 そもそも木賃宿に毛が生えた程度のこの小旅籠は、飯盛女は無論のこと、主人の他に誰も働き手がいない。
 さらには客も少ない。いても峠道の最中に日が暮れて迷いかけた者、それに人の多いところを嫌う訳ありの客ばかりで、今宵のように主一人で過ごすことも少なくはなかった。

「いえいえ、それでもご勘弁願います。人間相手はまだしも、妖怪様などは私の手に負えません」
『どうしてもか』
「どうしてもです」

 きっぱりと断られ、首なしは華奢な肩を落とした。
 顔があればため息を吐いていたのかもしれない。
 薄気味悪いがらんどうの中身を、主が胡散臭い目で見つめていると、やがてその化け物は踵を返し、夕闇の中に消えて行った。
 
 ……と思いきや、小走りで戻ってきた。

『時に主』
「なんでしょう」
『私の首が、どこへ向かったか心当たりはないか』
「まさか。とんでもないことです。あいや、ここから十数里行ったところの刑場に、獄門台が立つこともあると聞きやすが」
『無礼者。私が人間風情に打ち首にあって、こんな様になったと思うのか』
「怒らねぇでくだせぇ。京で晒された武将の首が、夜中に飛んで東へ戻ったという話だってあるじゃあないですか」
『いつぞやに聞いたような気はするが、あいにくそれは私の話ではないな』
「ならば心当たりはまるで……」
『そうか。知らぬか』

 するとその首なしは、一層無念そうに肩を落とした。
 烏の鳴く夕空を背景にして、ただでさえ低い背がさらに小さく見え、細い体が一層細く見えた。
 相手が化け物とはいえ、さすがに主も少々気の毒になり、

「お訊ねしやすが、どんな首でしょう」

 と、つい親身に語りかけていた。
 すると、首なしはしゃきっと立ち直り、

『見目麗しき少女だ。熟れた林檎色の髪に白粉いらずの肌、瞳は大きく、鼻は小さく形よく、振り返ればうなじに何とも言えぬ色香を感じる』
「ふむふむ。見目麗しき少女。熟れた林檎色の髪に白粉いらずの肌、瞳は大きく、鼻は小さく形よく、振り返ればうなじに何とも言えぬ色香を感じる、と」
『一言一句繰り返さなくていい。死ぬほど恥ずかしい』
「ならどうして申されたんですか」
『聞かれたから正直に答えたまでだ。嘘を吐く舌もないのだからな』
「そもそも、首がなくなるようなことがどうして起こるんですかね」

 よせばいいのに、主は重ねて聞いていた。
 平常であれば、客の素性を訊ねるような真似はしない。博徒などは血の気が多いし、腹を探られるのを嫌がる者が多いのだ。
 今日に限っては暇だったのと、この物珍しい客の素性に多少の興味が湧き、つい魔がさしたのだが。


『家出してしまったのだ。いや、この場合は「胴出」と言った方がいいものか』


 やはり、聞くのではなかった。

 首なしは悲痛な声で語り始めた。

『事の起こりは些細なことだった。路銀が心細くなってきた頃合いで、化粧道具に衣服と同じ銭をつぎ込むのは納得できない、と私の方から意見を出したのが発端だった』
「はぁ」
『そこからはお互いの不満を過去の失態も含めて、次から次へと持ち出すこととなった。といっても向こうは口が達者。こちらは口がないので歯が立たず。結局言い負かされそうになり、つい手を上げてしまったのだが、その手に噛みつかれた』
「へぇ」
『我が首は涙ながらに「もうこんな暮らしは嫌だ。私は自由な生首となる。ろくろ首の楽園を目指すんだ」と飛び出して行ってしまった』
「ほぉ」
『それからというもの、私の力は半減。魅力も半減。ふらふらと彷徨い歩き、首をたずねて三千里』
「三千里! そりゃまたどえらい距離だ」

 適当な相槌を打っていた主も、これにはおったまげる。
 三千という数字など、しばらく数えたことがない。
 何しろこの旅籠をやっていく上では、五より大きい数字を使う必要がほぼ無いのだ。
 客の頭数しかり。おかずの魚然り。宿賃然り。

『いや三千里というのは、あくまで気持ちの上ではだ。何しろ目がないので、もうどれだけ歩いたか見当もつかない』
「でしょうねぇ』
『辛い日々だった。妖怪仲間には哂われ、人間には石をぶつけられ、犬には立ちションされかけ、今朝は蚊に腕を食われる始末』
「一応、うちには蚊帳も線香も揃えておりますが」
『主よ。貴様もまた、私を虚仮にするのだな』

 首なしはしゃがみこんで、地面に指で文字を書き始めた。
 呆れていた主は、また気の毒になった。
 しかしよく見ると、へのへのもへじを書いている。深刻なのだか、呑気なのだか。

 とそこで、すずめやの主人の頭にピンとくるものがあった。

「待てよ。首なしの旦那。旦那の生首さんは、ろくろ首だか何だかの楽園を目指したとか行ってやしたね?」
『いかにも』
「これはあまり大きな声では言えやせんが……」

 といっても、耳のない場所のどこに息を吹きかければよいのやら。
 さしあたり、がらんどうの上の部分に向かって、主は囁きかける。

「この近くの山間に隠れ里がありやしてね。そこは人間よりも化け物の数が多いって噂があるんです」
『なんと』
「なんでも物の怪共は、そこを自分達の楽園と称して、ひっそりと面白おかしく暮らしているとか」
 
 首なしはポンと手を打ち、諸手を上げ、主人の手を取る。
 どうやら顔がないので、何とか身振り手振りで喜びを表わそうとしているらしい。

『そこだ。今すぐ私をそこに連れて行ってくれ』
「ですが……」
『頼む。このままでは私は泣くに泣けない。涙を流す顔を失った苦しみが、お前にわかるか』
「むむむむむ」

 すずめやの主人は唸った。
 情にほだされたのではない。
 この妖怪、顔は美人と言っていたが、確かにその手は透けるように白く、吸い付くような柔肌であったのだ。
 九分の情けに一分の下心か、あるいは九分の助平心に一分の情けか。
 主人の心はついに西から東へと傾いた。

「わかりやした。案内しやす」
『有難う。恩に着る』
「ところで旦那、お名前を伺ってませんでしたが」
『それは話せん。ナマステだからだ』
「ナマステ?」
『旅の恥はナマステと言うであろう』
「へへぇ。恐れ入りやした。あいにく学がないもんで。ならナマステさんと呼ばせてもらいやす」
『それは挨拶。でも本名は明かせないので、それでいい。私もお主のことは、すずめやの主と呼ばせてもらう』


 こうして、すずめやの主は、妖怪ナマステの案内役を請け合ったのであった。




 ○




 逢魔が時。人気のない山道を、すずめやの主と首なしの妖怪は登っている。
 この時期は夜でも虫の音が絶えないはずなのだが、妙にひっそりとして、やぶ蚊に悩まされることもなかった。 
 ただし道は険しい。樹の根が不揃いの階段になっていて、うっかり足を踏み外せば谷底へ真っ逆さまな場所もある。
 ところが、首なしは妙な勘が働いているらしく、ここまでは少しも手を借りることなく、きちんと道に沿って進んでいた。
 疲れた様子もまるでない。細足に見合わぬ健脚とみえる。

『まだ暫くかかるのか?』
「へい。これは土地の人間も、ほんの一握りしか知らぬ道です」

 主の方も息は切れてなかった。
 山の暮らしが長いと、体も坂に慣れるものだ。

「薪やら茸やらを採るのに使うんですが、時期によっては熊もでますし、足をくじいたりすりゃ助けを呼ぼうにも声が人に届くかどうか。まあ人間を目にすることは、ほとんどない道でございやすよ」

 するとそこで、ついてくる足音が、はたと止んだ。

『すずめやの主よ。もしやと思うが』
「へい」
『……こんな森の奥深くに連れ込んで、よからぬことを考えてるのではあるまいな』
「へっ? よからぬこと?」
『あんなことや、こんなことだ』
「いえいえ、滅相もございません。第一顔も無い相手にその気になるほど、肝は太くできてねぇでげす」
『まことか』
「へい」
『ならいい』

 二人はまた、山道を歩き始めた。

『ところで主』
「なんですか、ナマステの旦那」
『先ほど訊ねた件だが』
「へい」
『あんなことや、こんなこと、でどんなものかお前はわかったのか』
「洗面に髪結いでございましょう」
『なかなか口が立つな、すずめや』
「うちは気の長い客ばかりではないですからね」

 これでも刃傷沙汰に巻き込まれたのは、一度や二度ではない。
 大体にしてあんな宿に顔を出すのは、一癖も二癖もあるものばかりだ。
 浪人にやくざ者。俳人を称する怪しげな男。頬に傷を持つ行商の薬屋。殺気を放つ虚無僧。
 ……今思えば、さすがにみんな頭はあったな。

『そういえば主。ふと思ったことだが』
「へい」
『お前のその訛り、この土地のものではないな』
「ありゃ、バレやしたか。生まれは土佐ですが、そこから転々としましてね。今ではどこの訛りになってるのやら自分でもさっぱり」
『そうか。実は私も旅をして長い。元々は海の向こうの生まれなのだ。時に人界に潜り込み、時に山中に隠遁し、己の心が休まる場所を求めて、ずっと旅をしてきた。ひょっとすると、三千里もとうに歩いてるのかもしれん』
「そりゃまた途方もないことで。もしや南蛮の辺りも?」
『いや。私の仲間がいるとは聞くが、まだそちらの方は行ったことがない。だが黒船は見た。もちろん首と一緒の時にな』
「へへぇ。あっしも実はね。手足の長くて聞き慣れない言葉を話す客を泊めたことがあるんで。あれももしかしたらその類だったかもしれやせん。金払いは良かったし、ちょっと向こうの言葉も教えてもらいましたよ」
『ほう。なら試しに今ここで一つ披露してみよ』
「ヨーガファイヤー! ヨーガフレイム!」
『ろくな客ではないな』
 
 などと益体もない話を続けているうちに、二人は目的地にたどりついた。
 山中の奥深く。木々のツタが張った岩肌に、ぽっかりと穴が開いている。

『あの奥が?』
「へい。ですが、入って普通に進んでも先には出られません。すぐに行き止まりです」
『どういうことだ』
「さて、なんと言ってよいやら」

 二人は洞窟の中に踏み入った。
 中はひんやりとしていて、奥から風は吹いてくるのだが、一寸先は闇で埋め尽くされている。
 目を凝らしてみても何も見えず、仮に松明を持って進んでも、先には壁の他に何もあらず。
 無理に通り抜けようとすると、額にこぶを作る羽目になる。

「ところが不思議なこって、目を閉じて心の赴くままに進んでいけば、いつまでたっても壁に突き当らず、向こう側に抜けることができるんです。そういう仕掛けがあるみたいで。というわけで、ここは一つ旦那も目を閉じて、勇気をしぼって………あ」

 主はぽかんと口を開けた。
 首を持たぬ胴体が、すたすたとしっかりした足取りで先を行き始めたのだ。
 そして、いよいよ奥の壁にぶつかるかというところで、闇に吸われたかのように消えてしまった。

「ひゃあ……なるほど」

 すずめやは一人で感心した。

 顔が無い妖怪殿には、余計な忠告だったようだ。




 ○




 洞窟を出た先は、雲一つない月夜だった。先の山道と比べて、特に変わったところはない。
 しかし空と言わず、林の木々や足下に生えた名も無き草にも、独特の妖しさを孕んだ空気が染みついている。
 おそらく、この地に放り込まれた旅の絵師などは、何らかの技法でその景色に漂う妖気を表現しようと目の色を変えるであろう。
 まさに、人界とははっきりと隔たりのある異界であった。

『でかしたぞ、すずめや』

 首なしの旅人は興奮した様子で言う。

『我が首の気配を感じる。間違いなく、この地に来ているのだ。ついにたどりついた』

 やはり妖怪にはここの空気が合っているのか、手足の動きにも生気がみなぎっている。
 主人はその様子に微笑みながらも、すり足で退いていき、 

「それじゃあ、ナマステの旦那。ご達者で」
『待て待て待て』

 引き返そうとしたところで、すかさず裾を掴まれた。

『もう少し付き合ってくれ。おそらく首のやつは、私と会っても素直に戻ってきてくれないはずだ。ここは一つ、助太刀がほしい』
「助太刀! 勘弁してくだせぇ。血は見るのも流すのもごめんですよ」
『いやいや、あくまで話し合いで片をつけるつもりだ。ただ二人だけだと、どうしても互いに気が短くなりがち。なので公平に裁くことのできる者が側にいてほしいのだ。つまり助太刀というより立会人』
「けれど、これから夜通しその首を捜して回るんでしょう? その前に他の化け物に出くわしたらどうするんですか」
『案ずるな。私の首は存外近くにいる。こっちだ』

 首なしは素早い身のこなしで坂道を駆け下りて行く。
 付き合わされる主人の方は首を縮め、周囲の様子を窺いながら、えっちらおっちらついていった。



 
 
 二つに分かれたとはいえ、さすがは一心同体だった身である。
 ナマステの勘は正しく働いてくれたらしく、行方知れずの首はすぐに見つかった。

 月夜の下、何の変哲もない草原の上に、本当に宙に浮かぶ赤い頭があったのだ。

『やいやい! ついに見つけたぞ!』
「ん?」

 と振り返った顔は、まさしく少女のそれであった。
 そのあどけない表情が、すぐさま歪む。

「げっ! こんなところまで追ってきたの、あんた!?」

 なるほど。確かにその顔はしかめっ面であっても麗しくはある。
 目はぱっちりとしていて鼻は形よく、眉は整い、頬には月化粧。
 ただ首から下がないため、どれだけ美人であったとしても、やはり薄気味悪いことこの上ない。
 歩く胴体は、浮いた生首を鋭く指さし、

『ここで会ったが百年目。観念しろ、我が首よ』
「ふんだ。戻れって言われて戻る首はいないわ。このうすのろ胴体」

 と、浮かんだ首は頬を膨らませ、唇を横に曲げる。
 どうやら手足のない分、表情が豊かになっているとみえる。言葉遣いの方は、胴体よりもいささか童じみた感じがあった。

「あんたとの旅なんて、二度とごめんよ。私はもうここで暮らすことに決めたわ」
『バカ者。首だけで何ができる。我々ろくろ首は、共に行動してやっと一人前の妖怪。分かれた状態では、生成り以下の存在に成り果てるのだぞ』
「あんたこそバカね。心が二つに分かれた状態で共にいるろくろ首なんて、生成りどころか、そこら辺の人間の餓鬼や犬にも劣る存在よ」
『うっ……!』

 忘れ難い記憶があるのか、首なしはたじろいだ。
 胴なしの方は思いっきり舌を出して、

「元々、好みの全然違う私たちが一緒だったのが間違いだったのよ! 私が南へ行きたいって言えば、暑いから北へ行こう。甘い物が食べたいって言ったら、腸が汚れるから山菜を食え。歌舞伎が見たいっていったら、相撲の方がいい。私が可愛い笑顔を浮かべてるのに、気障っぽいポーズをわざと取る。全部逆じゃん! もう、うんざり! しかも私が知らない間に、変な連れまで作っちゃってるし。言っとくけどそいつも全然私の好みじゃないわよ」
『し、失礼なことを申すな私。こちらは見ず知らずの首のない美少女のために、わざわざ店を空けてここまで案内してくれた御仁だぞ。おそらく弥勒菩薩のようなご尊顔に違いない』

 黙って成り行きを見ていた立会人は、よろけそうになった。
 知らぬ間にナマステ殿は、同行者の姿を己の好きなように思い描かれていたようだ。
 しかし、二人の会話を聞いたところ、どうも部外者の出る幕はなさげな様子。
 ここはお互いいい機会だと思って、とことん意見を交じわせ、最後には丸く収まってもらいたいものだが……。

『ええい! こうなれば力ずくで連れ戻すまでだ!』
「でぇー!?」

 突如、首に躍りかかった赤合羽に、すずめやはずっこけた。
 話し合いで済むとは、一体何だったのか。

「きゃー! ちょっと! 髪掴むのは卑怯よ!」
『問答無用! 私の元に戻れ、分からず屋!』
「戻るもんか! そっちこそ私の言うことに黙って従ってりゃよかったのよ! がぶ!」
『ぐわっ! 手を噛むな手を!』

 光の滴る名月の下、浮遊する首と胴体が、踊るように争っている。
 後ろに黒子でもいれば、変わった人形浄瑠璃か何かだと無理やり呑みこめるのだが、あいにくそうではない。
 見る者の心を悪酔いさせる、げに怪しき光景である。

「ちぃっ! こうなったら奥の手よ!」

 ナマステの手の拘束を振り切った生首が、不気味な光を放った。
 刹那、

『わわーっ!?』

 血気盛んに動いていた胴体が、思いっきり腰を抜かしていた。
 なんと、宙に浮かぶ生首の数は、一つから十に変わっていたのだ!

『わ、私の首が増えた!?』
「へへーんだ」

 生首の群れは赤ブドウの房のように固まって宙に浮かび、同じ顔で得意げに笑う。
 離れた場所にいたすずめやも、あまりの光景に、声も出せずに慄然となった。

「あんたと別れて」
「この地にたどりついてから」
「私の力は増す一方」
「今じゃこんなことまで」
「できるようになったのよ!」
「うすのろのあんたには絶対真似できない芸当さね!」

 口上の後に、首の群れはゆらゆらと動きながら分かれ、ついに勢いよく縦横無尽に飛び始めた。
 けたたましい声を上げて少女の生首が飛び交う様は、さながら地獄絵の一角。
 これならまだ首のない胴体一つの方がマシである。

 そんな胴体は、生首が放つ無数の怪光線に脅かされ、あたふたと逃げ回っていた。
 こちらは滑稽を通り越して憐れみを誘う。

『ひぃー誰かお助けー!』
「見苦しいわね! 大人しく的になりなさい! あんたの意志を消却して、私は完全な存在となる!」

 いよいよ生首集団の包囲網が完成し、孤立する胴体を追い詰めたかに見えた。
 
 が、突然にして異な事が起こった。
 まさに勝手知ったる住み処を滅却せんとしていた首共は、残らず闇の内に放り込まれたのである。

「あ、あれ!? なんで真っ暗に!? やだ、怖い!?」

 生まれてこの方、己の目を信用し続けた少女の生首は、突然の闇に半狂乱となっていた。
 お互いがどこにいるかも分からないのか、ごっつんごっつん、と首同士がぶつかる音もする。
 草の上に身を伏せていた体の方も、状況が呑みこめていなかった。
 しかし、

「今です! ナマステの旦那!」

 その声に、しゃがみこんでいた身は、すっくと立ち上がる。
 頼るべきはずの視力を元から持たぬ胴体は、闇夜の中でも正確に動くことができる。
 状況はわからぬものの、この好機を逃す手はない。

 十の首のうち、九つは実体を持つ分身である。
 指揮を執る本命の首は、ただ一つ。核となるその頭に向かって、胴体は迷わず手を伸ばした。

『捕えた!』

 瞬間、星が霞むほどのまばゆい光が、草原をくまなく照らし出した。
 散り散りに分かれた妖気が一つに合わさり、一本の精神の串でまとめられる。
 光が止んだ後、紅合羽の長い襟には、見事赤髪の頭がすっぽりと収まっていた。

「ははは、やったぞ私。……くそう、やったわね私」

 姿を取り戻したろくろ首は、からからと笑ったあとに、歯ぎしりして悔しそうにした。
 それから己の頭を小突きつつ、

「うーん、まだ完全に戻ってないな。まぁそのうち落ち着くことだろう」
 
 と彼女は独り言ちてから、くるりと振り返る。

「すずめや! 見てくれ! これが私の元の姿だ! 宿で話していた見た目と、そう違いあるまい」
「………………」
「なんだ。完全体の私を見て驚い……」

 首を取り返したナマステ――もとい、ろくろ首の赤蛮奇は、つぶらな瞳を丸くしていた。
 彼女の身は、姿を見ることのできる目を取り戻した。さらに彼女の首は、己が身の記憶を受け継いだ。
 そして、統一された赤蛮奇の精神は、今宵の案内役を務めてくれた恩人を前にして、様々なことを理解するに至った。

「……主、その姿は」
「ええ。そういうことでごぜぇやす。どうもここの空気はいけませんねぇ」

 頭をかく店主の姿は、到底人間とは呼べない代物だった。
 耳があるはずの部分は鳥の羽のようなもので覆われており、背中には蝙蝠の骨に蝶の羽を組み合わせたような異形の翼がある。
 外界よりもこの地に相応しい、まさに妖怪の姿であった……が。

「いや、そんなはずない。妖怪であれば、旅籠で出会った時に私も気づいていたはずだ。ということは……もしや半妖?」
「へぇ。夜雀とかいう物の怪の血が、半分流れてるようで。こういう満月の晩に妖しげな気を嗅ぐと、こんななりになってしまうわけで」

 夜雀は元々、山道を行く人間を、奇妙な鳴き声や歌で惑わす妖怪である。
 それだけではなく、かの種族は襲う人間を鳥目にすることで、視力を奪うこともできるという。
 その能力が、今の戦いで発揮されたのだ。
 すなわち、目を頼りに動いていた首共を鳥目にしてしまうことにより、すずめやは赤蛮奇の胴の方を助太刀したのであった。

「実はね。客が入らずに困った時は、わざとあんな風に鳥目で迷わせて誘い込んだこともあったんです。いや、お恥ずかしい」
「なるほど……すずめやは、雀のお宿ならぬ、夜雀のお宿だったということか……」

 二人の間に、重たい沈黙が立ち込めた。
 赤蛮奇は主人の手を借りたことを、今更ながら後悔していた。
 無論、半妖を見下しているのではない。そもそもが妙だったのだ。あのような難所に独りで旅籠を営み、妖怪の地への抜け道を知っているなど、ただの人間ではない。
 にも関わらず、あくまで人間としての生活を送っていたお人よしの主人を、無理やり物の怪の世界に引き込んでしまった。
 そのことに自責の念があったのである。

「主よ。私はここらで自分の旅を終えようと思う」

 無言の間を先に破ったのは、赤蛮奇の方だった。
 彼女は戻った首をふわりと浮かし、すいーっと円を描いて、自然豊かな四方に視線を一巡りさせる。

「長らく流浪の身であったが、この首の記憶をなぞってみると確かに……こんな素晴らしい土地がまだこの世に残っているとは、きっと来るまで信じられなかっただろう。妖怪の楽園というのも嘘ではないらしい。心の枯れていた部分まで甦った気分だ。私もそろそろ、根を下ろす時が来たのかもしれない」

 赤蛮奇の頭は、目線を半妖の主の方に戻し、何かを心に決めたようにあごを引く。

「主もどうだ」

 その体が、長袖から小さな手を差し伸べていた。

「この地に移り住むことを考えてみては。外で人間相手に宿を営んできた経験を、ここで生かすのは骨かもしれない。私でよければ、手伝わせてもらう。最後の旅を案内してくれた、せめてもの礼として」

 また沈黙が下りる。
 けれども今度の無言の時間は軽やかで、清々しくもあった。
 二人の側を通り抜ける夜風には、この地に息づく幻想の力が染みこんでいた。まるで妖怪の渇きを満たし、未来へと運ぶ追い風のようでもあった。

 しかし、主は彼女の手を取らなかった。

「いいえ、あっしはご遠慮させていただきやす」
 
 と、丁寧に固辞したのである。

「というより、ナマステの旦那。いや、ナマステのお嬢殿。一つ勘違いしておりますよ」

 硬直している首と胴に、すずめやの主人は苦笑して言った。

「ここに来るまでの道を知ってるのは、もうすでに一度訪れてるからです。移り住むつもりなら、とっくに移り住んでおります」
「そ、そっか。そうだな」

 差し出していた手が引っ込み、両腕がパタパタと火の粉を払うように動く。
 己の勘違いを悟った赤蛮奇は、赤面奇に変わっていた。

 けれども、主の話はまだ終わっていなかった。

「ナマステ様のお言葉、心に沁みました。勿体ないお誘いでございます。ですが……確かにここは妖怪の安らぎの地で、旅の終わりの場所なのかもしれませんが、私は半端者なせいか、未だ外に未練があるようで」
「これからもまだ、あんな辺鄙な場所で宿を続けるつもりなのか?」
「まぁ辺鄙なところで年中暇をしてはおりますが、あんな宿でも、なきゃ困る客も少しはいるかもしれませんし」
「いずれ街道ごと麓の宿場もなくなって、『あの時ああしていれば』と路頭に迷うことになるぞ」
「その時は……そうですね。この場で言っていいものやら」
「なんだ、何かあるのか」
「ではおそれながら明かしますが、宿を畳んで旅してみようかと思いやす」

 全く予想もしてなかった風呂敷を広げられ、赤蛮奇は瞠目した。

「これもまたナマステ様のおかげなんで。私はナマステ様ほど長く旅をして見聞を広めたわけじゃありません。ほとんどの妖怪殿からすれば、きっと鼻たれだ。お寺風に言えば、煩悩が抜けきってねぇということでありますよ」
「………………」
「だからもう少し世間を巡って、ここが真の楽園であると納得してから、戻ってこようと、そんな図々しいことを考えております」
「………………」
「まだここに骨を埋めると決めるには早いということで。それでは、ナマステ様。お達者で。あいや」

 すずめやの主人は一度手を掃ってから、両の袖を合わせ、恭しく腰を曲げた。

「長旅、まことにお疲れさまでした」

 そう締めくくった。
 それから袖を合わせたまま、小さく一度お辞儀をして、とぼとぼとした足取りで去っていった。

 翼が生えたその孤独な背中を見ているうちに、赤蛮奇の心はもやもやとしてきた。
 頭には血が上り、胴の方は無性に腹が立っていた。
 気が付けば、手が勝手に虚空をさまよい、何か投げつけてやるものがないか探していた。
 石。はダメだ。うっかり怪我させてしまってはまずい。
 泣き言。もダメだ。妖怪の矜持が許さない。
 お金。もよろしくない。確かにそんな約束をしていた気はするが、こんな別れにふさわしくない。

 だから、ええと、何かいいものは。
 そうだ。これだ。これしかない。

「主よ! 受け取れ!」

 去りゆく影が、ゆっくりと振り返る。
 そして、赤蛮奇が投げつけた、月明かりに照らされ、放物線を描いて飛んでいったそれを見て、

「ひぇーっ!?」

 半妖かつ大の男らしからぬ悲鳴を上げた。
 飛んできた小ぶりの西瓜ほどのそれを受け止めることができず、情けないことに尻餅までついている。

「粗末に扱うな。それは私の首の一つだぞ」
「見りゃわかりやす! どうしてこれを!?」
「他にあげるものがなかったんだ。心ばかりの礼だ。宿の看板首にでも使ってくれ」
「看板首!?」

 言われてすずめやは、こんなものを玄関に置く宿を想像してみた。
 険しい山道に足が棒となり、何とか見つけた旅籠に倒れこむようにして入り、鼻先に現れたるは少女の生首。
 自分が人間の客なら、どれだけ疲れていようと、死に物狂いで下山するだろう。
 ましてやその首が喋りだしたのなら、麓に寺が見つかり次第飛び込んで、以後末永く仏に仕えるようになるに違いない。

「弱ったな。これからはうちの宿に妖怪しか泊められそうにありません」
「人間の客の時は、その首を適当な服の上に載せておけばいい。勝手に操るだろう。ついでに客を鳥目にしてやれば、容易く見破られはしまい」
「うへぇ」
「妖怪相手の時は、首のまま応対させればよい。並の女中程度には働くし、話し相手にもなるぞ。留守番も麓の偵察もお任せあれだ。しかも、お主が不要に思って追い出せば、自然に消えて私の元に戻る。うん。考えれば考えるほど、優れものに思えてきた」
「そうは言いますがねぇ……」

「旅する人間も妖怪も、等しくもてなす。そんな宿が、外の世界に一軒くらいあったっていいじゃないの」

 と言ったのが、側に浮く生首であったので、すずめやの主人はハッとさせられた。
 
「そしてもし宿を畳んで、旅に出る時がくれば、できればその首も連れて行ってもらいたい」

 今度は赤蛮奇の本体が告げた言葉に、旅籠の主人の方が瞠目していた。

「実はああは言ったが、私もまだ悟りきれていないようだ。我が身には紛れもなく、もっと旅を続けたいという、そんな心が残っていた。その心を私の持つ首の一つに封じ込めて送ったのだ。ろくろ首だからこそできることだ」
「………………」
「それでは、さようなら。お主のことは忘れない。またいつか会おう」

 今度こそ、赤蛮奇は背を向けて去っていった。
 その後ろ姿が霞み出したところで、茫然としていた半妖の夜雀の傍で、「えへん」と咳払いが聞こえた。

「まぁ、改まって言うのもなんだが、よろしく頼む」

 と、別れたばかりの顔は、しかつめらしく言う。
 彼女の口調が、出会ったばかりの首から下だけの時と変わってないことに気づき、すずめやは不思議にホッとしていた。
 よいしょ、と草原から腰を持ち上げ、
 
「どうぞよろしく。それじゃあ、うちの宿にご案内しやす」
「主人よ。私の胴がいなくなって、がっかりしているようだが」
「へ? いやいやそんなまさか。ただ最後に一度また、握手していただければよかったかなとね」
「それだけか。恩義に付け込んで、あんなことやこんなことを企んでいたのではあるまいな」
「洗面や髪結いが必要な時は言ってくだせぇ」
「またそう賢しく逃げる」
「いやいやとんだ誤解で。気のせいか、明日から生首さんと語らうのが楽しみになってきやした」
「ふふ。そう言われるのはまぁ、悪くない気分だ」

 奇妙な二つの影は、ろくろ首が去った側とは逆、人界の方へと消えて行った。




 ○




 夜もとっぷりとふけ、妖怪の時間がやってくる。
 赤提灯に火が灯り、香ばしく焼けたタレの匂いが、伸びやかな歌声を添えて竹林の側に広がっていく。
 今宵の夜雀の屋台の客は、二人とも初顔だった。

「うん! 味は抜群! 雰囲気も最高! 歌もいい!」

 串焼きに舌鼓を打つのは、狼の耳と尾を持つ黒髪の少女だ。
 落ちそうな頬を片手で押さえ、いかにも人懐っこそうな笑みで、

「こんないい店だって知ってたら、もっと早く来ればよかったー」
「嬉しいわ~♪ 今じゃ鳥目にしなくても~お客さんには困らない~♪」

 女将姿の夜雀も、調子よく歌で返礼する。
 先の狼風の少女は、愉しそうに言った。

「鳥目と歌を客引きに使うのって、きっと世界でもこの屋台だけよね」
「……いいや」

 椅子に座るもう一人の客が、首を振った。
 こちらは狼少女の連れだが、打って変わって静かな客だった。
 それなりに長い時を生きているらしく、盃を干す姿も堂に入っている。
 ところが赤マントの襟に隠れた顔はどこか幼気で、背伸びしている子供のような感じもあった。

「歌は知らないけど、鳥目の商売の方は心当たりがある。外の世界で会ったわ」
「へぇ~。そいつも夜雀だったんだ」
「今はこっちに来てるの? それともまだ外に?」
「さて。今ごろどこにいるのやら」

 興味を抱く二人に、ろくろ首はとぼけたように呟き、手酌で盃を満たす。

 幻想郷に移り住んで、もう長い。
 始めは戸惑うことも多かったものの、今はすっかり落ち着き、この近くの里にて人に化け、静かに生活している。
 ただ、生来の性格が故か、どうにも交友に乏しいため、傍から見れば孤独なように映ってるのかもしれない。
 けれども、赤蛮奇自身は、寂しさを覚えたことはまるでなかった。

 時々、こんな噂を耳にした。
 外界で行き場を失った妖怪の多くは、この幻想郷で旅を終えるのだが、やってくる方法は様々だ。
 その中に、とある旅籠の主人に案内されてこの地にやってきたという者が、それなりの数に上るのである。
 さらに、その宿では少し変わった赤髪の女中も働いていたとか。思わず襟に隠した口元が緩む話だった。

 ところが近頃は、その宿の噂を聞かなくなって久しい。赤蛮奇はその訳を知っている。

 たまに目を閉じ、こんな風にうたた寝していると、『見えて』くるのだ。
 瞼の裏に、旅のお供の姿が。世界を歩いて巡るお人よしの――耳に羽を生やした横顔が。

 ――首の数が元に戻るのは、まだ先になりそうね。

 赤蛮奇はそんなことを心に浮かべつつ、盃を掲げた。

 終着の地にして、出発の地。

 この妖怪の楽園に乾杯、と。


 
 

 昔、韓国発の生首と恋愛するゲームの紹介を見たことがあるのですが、まさか十年以上経って別の生首キャラに萌える日が来るとは思いませんでした。
 しかし私は赤蛮奇ちゃんの胴萌えでもあるのです。同志の方が少しでも楽しんでいただけたのであれば、この上ない喜びです。ナマステ。
 
 
木葉梟
http://yabu9.blog67.fc2.com/
コメント



0.44簡易評価
2.8名前が無い程度の能力削除
首なし蛮奇ちゃんと宿の主人のやり取りに大変笑えました。
とても面白い作品でした。
3.10名前が無い程度の能力削除
軽快な調子が心地よかったです。
よい噺でした。ナマステ。
4.6名前が無い程度の能力削除
胴萌えって控えめに言って体目当てっすね…
ばんきっきの頭が独自の放浪を続けているってのはSF(少し不思議)っぽいなあ
tomakもアナログ回線時代の話なんであれも幻想郷で話題になってるかもね
5.10名前が無い程度の能力削除
すっきりしたいい話でした
ダルシムは不意打ち過ぎてダメだった
8.9門番削除
小気味よい会話のキャッチボールが楽しかったです。
胴は胴で別に意思を持っているというのもアリですね。
10.8Issac削除
落語のような軽妙な掛け合いが心地よいSSでした。
なんとなくですが『抜け雀』という落語の題目が連想されましたね。
劇的な展開、数々の笑いどころ、幻想的な情景など、それらをこのような短い文章に盛り込めるのは流石です。

それにしても、この文体からフクロウさんの香りがしますね。(おっと。人違いでしたら御免なさいね)
これからの作品、陰ながら、心待ちにしてます。ナマスカール。
11.8智弘削除
赤蛮奇の首と胴がここまで明確に人格を分けて真っ向からぶつかり合う話はちょっと見たことがなかったので、読んでいてとても楽しかったです。
すずめやと胴体の軽快な掛け合いと一捻りある展開が味わえる、良質の短編でした。
ラストシーンはまさしく、首『が』たずねて三千里といったところですね。
12.5めるめるめるめ削除
意外な発想がよかったです。
13.9あめの削除
二行読んだ段階でもうすでにうまいなと思ったんですけど、やはり全体を通して非常にレベルが高い書き方をされていて、自分にはちょっと欠点らしい欠点は見つけられませんでした。また文章もシンプルなんですけど、不足なく状況を伝えているのがうまい。

首をなくした胴体が己の首を探して旅をしている、という発想が大変素晴らしい。これだけでもう面白いんですけど、「胴体」側ではなくて「宿の主人」側から物語を描くやり方が見事にはまっているんですよね。宿に首なしが訪ねてくるってすごくシュールな絵柄……w
二人のやり取りも面白いし、セリフの所々からその時代を感じさせる雰囲気があったのがまた良かったです。所々に挟まれる小ネタも思わず笑ってしまいました。

<「へへぇ。あっしも実はね。手足の長くて聞き慣れない言葉を話す客を泊めたことがあるんで。……」>
このセリフの『手足の長くて』っていう言い回しいいなあって思ったんですよ。「背丈が高い」とかよりもぐっとリアリティを感じさせる所があって、「なるほどなあ……」なんて感心したんですけど、『ヨーガファイヤー!』が出てきた瞬間、「本当に長いんかい!」ってツッコミを入れたくなりましたよ! 笑えて良かったですけどなんか悔しい……!

一番好きなやり取りは、
『あんなことや、こんなこと、でどんなものかお前はわかったのか』
「洗面に髪結いでございましょう」
『なかなか口が立つな、すずめや』
です。こういう台詞回しができるようになりたい……!

宿の主人もただの人間かと思わせておいて、しっかりネタを仕込んでおくのもさすがですよね。
赤蛮奇が首を取り戻すという大筋がありつつ、宿の主人もしっかり心理的な成長があり、「旅」というテーマに対して、「旅の終わりの赤蛮奇」と「旅の始まりの宿の主」という対比を取らせているのが、もう見事としか……。

こういう赤蛮奇の過去があってもいいな、と思わせる非常に完成度の高いssだなと感じました。面白かったです!!
15.6がま口削除
べらべら喋る胴体とはなんと面妖で斬新なことよ(笑)
しかし、すずめ屋さんのご主人は実はみすちーの親族というオチなのかと思ったら、別に赤の他人のままだったのか……という肩透かし。
私の読解力が足らないのか、登場人物と話の筋が噛み合わないというか、こんがらがるというか……
でもアイデアと文章力が好きです。作者様の違う作品も読みたいと思いました。
16.10菓子削除
キャッチーな題名、読みやすい文章に面白い話。
満点以外考えられません。
後日感想を書き直します。
17.8矮鶏花削除
くすりと出来る軽妙な掛け合い。
頭がないというギミックを有効に使っての終盤。読み終えた後におこる爽やかだけれど少ししんみりも出来る読後感。
いずれも素晴らしいものでした。
18.6名前が無い程度の能力削除
胴首同調って大事ですよね、ナマステ。
19.10sosowa削除
最高の作品です。
20.6名前が無い程度の能力削除
蛮奇と主人のやり取りなどは面白かったのですが、主人が半妖だったというのはちょっと唐突に感じました。
21.10名前が無い程度の能力削除
まるで落語のようなお噺、堪能させていただきました
赤蛮奇とすずめやの主人のやり取りは絶妙でしたし、ところどころのネタにもニヤリとしました
そして、この爽やかな読了感
とても楽しかったです
22.無評価名前が無い程度の能力削除
後からすみません。大変面白く読みました。ありがとうございました